サルバドール・デ・イトゥルビデ・イ・マルサン

サルバドール・アグスティン・フランシスコ・デ・イトゥルビデ・イ・マルサンの生涯

サルバドール・アグスティン・フランシスコ・デ・イトゥルビデ・イ・マルサンは、1849年9月18日にメキシコシティで生まれました。彼はメキシコ第一帝政の皇帝アグスティン・デ・イトゥルビデの孫であり、短命ながらも波乱に満ちた人生を歩みました。彼の人生は、帝政時代の複雑な政治情勢と、家族の歴史が交錯するものでした。

サルバドールは、元メキシコ皇帝アグスティン1世の三男であり、在米メキシコ領事館の書記官であったサルバドール・デ・イトゥルビデ・イ・ウアルテと、マリア・デル・ロサリオ・デ・マルサン・イ・ギサソーラの間に一人息子として誕生しました。そのため、彼はイトゥルビデ家の伝統や期待を背負った存在として育ちました。

1864年、オーストリア皇弟マクシミリアンがメキシコ帝位を受け継ぐと、イトゥルビデ家の一族はメキシコ宮廷に呼び戻されました。サルバドールとその従弟アグスティンは、マクシミリアン皇帝によって養子として迎えられ、彼らは皇室の一員として特別な地位を与えられました。しかし、彼らが君主の血筋を持たないことから、マクシミリアンはサルバドールたちを帝位の継承者には考えていなかったと言われています。

1865年9月16日、二人はイトゥルビデ公の爵位を授与され、宮廷の序列において皇帝家の次席に位置付けられました。このような養子の縁談は、兄弟間の緊張を和らげるものであったとも考えられています。

教育面では、シャルロット皇后の支援によりフランスのパリに留学する機会を得たサルバドールですが、1867年に第二帝政が崩壊したことで状況は一変しました。彼はマクシミリアンの故国であるオーストリアへと亡命し、弟子としての立場を保持するために、フランツ・ヨーゼフ1世のもとで年金を求める努力を続けました。その結果、彼は年金の受給資格を獲得し、オーストリアの上流社交界にも顔を出すようになりました。

ウィーンにて、サルバドールは南アフリカ帰りの若いハンガリー人男爵と親しい関係を築きました。この友人の所領であるミコシュセプラクを訪れた際、彼はその親類であるギーゼラ・ミコシュ・デ・タロードハーザと出会います。そして、1871年6月21日に二人は結婚し、長女マリア・ホセファを含む三人の娘をもうけました。

結婚後は妻の実家が所有するミコシュドプスタ城で生活をしていましたが、1881年に同城が売却されると、彼らはヴェネツィアのヴィラでの生活を始めます。在住中は、マドリード公爵などの他の王族と交友し、彼の社交界はさらなる広がりを見せました。

しかし、人生の晩年に差し掛かると運命は彼に容赦なく、1895年にコルシカ島での旅行中に急性虫垂炎を発症し、彼は急死してしまいました。サルバドールは短い生涯を送ったものの、その生涯を通じてメキシコの歴史の一端を担う存在として記憶されています。

もう一度検索