サヱグサ本館ビル

サヱグサ本館ビル：アップル銀座の象徴として輝いた銀座のランドマーク

東京都中央区銀座に位置していたサヱグサ本館ビルは、1967年の竣工以来、茶褐色のタイルが特徴的な老舗ビルとして親しまれてきました。開業当初は住友銀行（現三井住友銀行）がテナントとして入居していましたが、2003年、歴史的な転換期を迎えます。

この年、アップルコンピュータ（現Apple）がアメリカ国外初となる直営店を銀座に出店する計画を発表。それに伴い、サヱグサ本館ビルは全面的な改修工事を実施することとなりました。改修設計は、Bohlin Cywinski Jackson事務所が担当。既存の建物の骨格を活かしながら、現代的なデザインを取り入れるという、大きなチャレンジでした。

改修では、まず既存の茶褐色のタイルや柱が撤去されました。代わりに、大型のファサードと開放的なエントランスが設置され、ビルの印象は一変します。低層部には、アップルの象徴であるリンゴのマークが浮かび上がるステンレスパネルを採用。上層部にはガラスカーテンウォールを設置し、2層構成の洗練された外観が完成しました。建物全体は、2003年当時のApple製品をイメージした、未来的なデザインとなっています。

内部も大きく様変わりしました。ライムストーンの床とステンレスパネルの壁面、そしてガラス張りのエレベーターという、洗練された空間に生まれ変わりました。驚くべきは、改修工事がわずか6ヵ月半で完了したことです。6階以上のテナントは、工事期間中も通常通り営業を継続していました。

2003年11月30日、改修工事が完了し、アップルコンピュータのアメリカ国外初となる直営店「アップルストア銀座店」（後のApple銀座）が、地下1階から地上5階にオープンしました。Apple銀座は、瞬く間に銀座の新たなランドマークとなり、多くの人々を引きつけました。洗練されたデザインと、革新的な製品の数々が人々を魅了しました。

しかし、時代の流れとともに、サヱグサ本館ビルも新たな歴史を刻むことになります。2022年8月28日午後9時、Apple銀座は営業を終了。銀座8丁目への移転を機に、サヱグサ本館ビルは解体されることになりました。同年9月1日より解体工事が開始され、長きに渡り銀座の街並みに貢献してきた歴史あるビルは、その姿を消しました。

2004年度グッドデザイン賞を受賞したサヱグサ本館ビル。アップル銀座という象徴的なテナントと共に歩んだ歴史は、多くの人々の記憶に刻まれています。その姿は消えましたが、銀座の歴史、そして日本のIT業界の歴史において、重要な役割を果たしたビルの存在感は、これからも語り継がれていくでしょう。

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