サンケイ新聞事件

サンケイ新聞事件についての詳細

サンケイ新聞事件は、1973年12月2日に産経新聞（当時のサンケイ新聞）が掲載した自由民主党の意見広告が発端となった訴訟である。この意見広告は、日本共産党の「民主連合政府綱領」とその内容が矛盾していると指摘するものだった。共産党は当時の参議院選挙において39議席を獲得し、注目を集めていた。

この事件は、言論の自由やメディアの表現権に関連する重要な事例であり、特にアクセス権の存在についての議論が巻き起こった。共産党は、自らが主張する意見に対する反論文を無料で同じスペースに掲載することを求め、東京地裁に訴えを提起したが、裁判所はこの要求を却下した。裁判所は、憲法21条に基づいてアクセス権を認めることはできないとの判断を示した。

経緯と主要な出来事

事件の背景には、1968年に産業経済新聞社の社長となった鹿内信隆が制定した「サンケイ信条」がある。この信条に基づき、1973年には「正論」欄が設けられ、自由民主党の意見広告を許可する方針が打ち出された。意見広告が開始されると、12月2日に「前略　日本共産党殿　はっきりさせてください」という題の広告が掲載され、共産党に対する批判が展開された。

しかし、共産党はこの広告を挑戦的なものであると捉え、憲法に保障された反論のための権利を行使するために裁判に訴えた。結果として、一審、二審ともに共産党の請求は却下され、アクセス権が確認されることはなかった。これに対し共産党は最高裁に上訴したが、1987年に棄却され、全面敗訴が決定した。

事件の意義

この事件は、アクセス権が憲法21条から直接認められるかどうかを巡る重要な指針を示すものであり、新聞の表現の自由に対して萎縮効果を与える可能性があるとされ、判例が示すようにアクセス権を直接的な権利としては認められないことが明確になった。また、反論権が民法723条の救済方法の一つとして考慮される余地はあるが、明文化された法律制度の必要性が指摘された。

日本共産党と産経新聞の関係

事件の影響により、日本共産党と産経新聞の関係は相当に悪化した。1988年には、共産党関係者が産経新聞の記事執筆者に接触しようとしたが、組織の規則に反する行為と見なされ、コンフリクトが続いた。その結果、両者の関係は完全に決裂し、それ以降の対話は困難になった。

この事件は、日本におけるメディアの自由と表現権の範疇を定義づける重要な出来事として記憶され続けており、今後の言論活動にも強い影響を及ぼしている。特に政党に対する批判が集中的に行われる場面において、新聞社の自由な表現を守ることの難しさが浮き彫りになった。

参考文献

• - 高山尚武『ドキュメント産経新聞私史 広告マンOBが綴る水野 ‐ 鹿内ファミリーの実像』青木書店、1993年3月。
• - 高世仁『娘をかえせ息子をかえせ―北朝鮮拉致事件の真相』旬報社、1999年4月。

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