サンザシの樹の下で

『サンザシの樹の下で』は、中国の巨匠チャン・イーモウ監督が手掛けた2010年の恋愛映画です。文化大革命という激動の時代を背景に、純粋で切ない恋物語が展開されます。

物語の主人公は、都会の高校生である静秋（ジンチュウ）。文化大革命下、教育の一環として農村にホームステイすることになります。その村には、抗日戦争で命を落とした志士たちの血を吸って赤い花を咲かせると伝えられる、サンザシの樹がありました。しかし、静秋が訪れたとき、花はすでに散り、次の開花は来年を待たなければなりません。

静秋がホームステイした農家には、地質調査隊の一員として村を訪れていた青年、孫建新（スン・ジェンシン）がいました。彼は「老三（ラオサン）」と呼ばれ、村人たちから親しまれています。孫は共産党幹部の息子で、経済的に恵まれた環境に育ちましたが、一方の静秋は、父親が労働改造所に送られ、母親も職場で再教育を受けており、経済的にも社会的にも厳しい状況でした。

そんな二人は、次第に心を通わせていきます。孫は「一生待つ」と静秋に誓い、静秋もまた、孫に惹かれていきます。静秋が街に帰った後も、二人は密かに会うことを重ねます。やがて、静秋は教師として仮採用が決まりますが、立場上、休暇中は自主的に労働に参加していました。

孫は、経済的に静秋を援助しようとしますが、それは静秋の母親に見つかってしまいます。母親は、二人が距離を置くように説得しますが、孫への想いを断ち切れない静秋。

そんなある日、静秋は孫が白血病で入院したという噂を聞き、病院へと駆けつけます。孫はただの検査だと言いますが、静秋は彼に寄り添い、3日間を共に過ごします。その間、同じベッドで寝ても、孫は服の上から触れるだけで、それ以上のことは決してしませんでした。

街に戻った静秋は、友人の妊娠と中絶に立ち会います。そこで「男の目的は一つ」という言葉を聞き、再び孫の病院へ向かいますが、すでに退院しており、消息は分からなくなっていました。

しばらく経った後、教師として教壇に立っていた静秋に、突然の連絡が入ります。急いで病院に駆けつけると、そこには変わり果てた姿の孫がいました。別れを告げるよう促されるまま孫の傍に寄り、必死に語りかける静秋。孫はわずかに瞳を動かし、天井に貼られた二人の思い出の写真を見つめます。

孫の遺体は、思い出のサンザシの樹の下に埋葬されます。その後、その場所は三峡ダムに沈んでしまいますが、静秋は毎年、その場所を訪れます。そこには、赤い花ではなく白い花が静かに咲いていました。

この映画は、文化大革命という厳しい時代の中で、純粋で献身的な愛を貫く二人の姿を、美しく、そして切なく描いています。チャン・イーモウ監督の繊細な演出と、主演を務めたチョウ・ドンユィとショーン・ドウの演技も素晴らしく、観る者の心を深く揺さぶる作品です。

監督はチャン・イーモウ、原作はエイ・ミーの『山楂樹之戀』、脚本はイン・リーチュエンが担当しました。撮影はチャオ・シャオティンが手掛け、音楽は日本の巨匠、久石譲が担当しています。

公式サイトや、allcinema、KINENOTEなどの映画データベースサイトでも詳細な情報が公開されています。また、英語での情報も、AllMovieやIMDbで確認することができます。

『サンザシの樹の下で』は、時代を超えて人々の心を捉える、普遍的な愛の物語です。

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