サンタクルス事件

サンタクルス事件

サンタクルス事件（サンタクルスじけん）とは、1991年11月12日にインドネシアの支配下にあった東ティモールのディリで発生した大規模な弾圧及び虐殺事件です。この時、独立を求める市民が行ったデモ行進に対してインドネシア国軍が無差別に発砲し、多くの死傷者を出しました。この事件は後に「サンタクルス虐殺」とも称されるようになり、国際社会に大きな波紋を呼び起こしました。

背景と経緯

インドネシアによる侵攻

1975年、当時の宗主国ポルトガルと話し合いを進めていた東ティモールは、インドネシアに侵攻され、1976年にはインドネシアの27番目の州として併合されました。この侵攻以降、インドネシアによる厳しい弾圧が続きました。推定では、侵攻後の2か月間に約6万人の住民が命を落とし、インドネシアの支配下では全人口の3分の1が虐殺の犠牲になったとされます。

1991年に入ると、ディリでは独立派の若者がインドネシア国軍によって命を奪われました。この後、遺族や支持者が行った葬儀の際、参加者がデモ行進を行うこととなり、これが暴力的な衝突へとつながります。

デモの実施

11月12日に、モタエル教会で行われたミサ後、約3500人の市民がサンタクルス墓地へ向けて行進を開始しました。デモ参加者たちは「東ティモール万歳」と叫び、独立を掲げる横断幕を持って進んでいきました。しかし、デモ隊が墓地に到着した頃、インドネシア国軍がトラックで現れ、突然発砲を始めました。この間、国際メディアも現場に居合わせており、事態の様子が広く報じられることとなります。

犠牲者と国際反響

インドネシア国軍が公表した死者数は19人でしたが、その後の報告では実際の数は数百人に達するとされました。アムネスティ・インターナショナルは52人の名前を公開し、1992年には独自の調査で273人が死亡したと発表しました。この事件は国際的な怒りを呼び、日本をはじめとする各国で抗議活動が広がりました。アメリカは国際軍事教育プログラムの停止を発表し、オランダやカナダも援助の停止を決めました。日本国内でも東ティモールを支援する決議が成立しました。

インドネシア政府の対応

事件後、インドネシア政府は調査委員会を設置しましたが、その構成は現役・退役の軍人が多数を占めるものであり、公正な調査が行われるかは疑問視されました。政府は、デモ参加者を攻撃的と見なし、軍の発砲は「正当防衛」とする報告を発表。また、デモに参加した若者たちに対する厳しい処罰が下されましたが、国軍としての責任は問われることはありませんでした。

独立後の動き

2002年に東ティモールが独立を果たした後、サンタクルス事件は国民の祝日として記念され、事件の真相究明が進められています。専門機関により、過去の人権侵害が調査され、数々の遺体も発見されています。この事件は、東ティモールの独立運動において重要な一翼を担ったと言えるでしょう。今なお、サンタクルス事件は、その記憶や教訓が語り継がれています。

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