サンタナIII

『サンタナIII』（Santana）解説

1971年にリリースされた『サンタナIII』は、アメリカのロックバンド、サンタナにとって通算3作目にあたるスタジオアルバムです。バンドは前作『アブラクサス』で飛躍的な成功を収めていましたが、本作では更なる音楽的な進化と深化を遂げています。

この作品の制作にあたり、バンドはメンバー構成に重要な変更を加えました。特に注目されるのは、当時わずか17歳であった若き才能溢れるギタリスト、ニール・ショーンが正式に加入したことです。これにより、バンドはカルロス・サンタナとのツイン・リード・ギターという画期的な布陣を確立しました。二人のギタリストが織り成すスリリングな掛け合いは、アルバム全体のサウンドに新たなダイナミズムをもたらしています。また、パーカッション奏者のコーク・エスコヴェードが準メンバーとして制作に深く関与し、その強固なリズムセクションを一層強化しています。加えて、スライ＆ザ・ファミリー・ストーンのドラマーであるグレッグ・エリコをはじめ、ホーンセクションで知られるタワー・オブ・パワー、シンガーのリンダ・ティレリーといった多彩なゲストミュージシャンを招き、サウンドに奥行きと厚みを持たせています。

アルバムに収録されている楽曲は、サンタナ特有のラテンロックを基盤としながらも、多様な音楽的要素を取り入れています。オープニングを飾るインストゥルメンタル曲「バトゥーカ」は、作曲者の一人であるグレッグ・ローリーによれば、クラシック音楽の巨匠レナード・バーンスタインの作品から着想を得て制作されたといわれています。また、アルバムの最後を飾る「情熱のルンバ」は、プエルトリコ出身のラテン音楽のパイオニア、ティト・プエンテによる楽曲を、サンタナ独自の解釈で再演したものであり、前作収録の「僕のリズムを聞いとくれ」に続くプエンテ作品のカバーとなります。

このアルバムは商業的にも大きな成功を収めました。全米ビルボードチャートで初登場1位を獲得し、サンタナにとって『アブラクサス』に続く2作目の全米ナンバーワンアルバムとなりました。これにより、彼らは一過性の成功ではなく、シーンにおける確固たる地位を築いたことを証明しました。また、シングルカットされた「新しい世界」（Everybody's Everything）は全米シングルチャートで12位を記録するヒットとなり、アルバムの成功を後押ししました。

主要な参加ミュージシャンは以下の通りです。

カルロス・サンタナ: ギター、ボーカル
グレッグ・ローリー: ピアノ、オルガン、ボーカル
ニール・ショーン: ギター
デイヴ・ブラウン: ベース
マイケル・シュリーヴ: ドラムス
ホセ・チェピート・アレアス: パーカッション
* マイケル・カラベロ: パーカッション

ゲストミュージシャンとして、コーク・エスコヴェード（パーカッション、バッキング・ボーカル）、リコ・レイエス（リード・ボーカル、バッキング・ボーカル）、グレッグ・エリコ（タンブリン）、タワー・オブ・パワー（ホーン・セクション）、リンダ・ティレリー（バッキング・ボーカル）、マリオ・オチョア（ピアノ）、ルイス・ガスカ（トランペット）らが名を連ねています。

アルバム本編は以下の9曲で構成されています。

1. Batuka (J. Areas, D. Brown, M. Carabello, G. Rolie, M. Shrieve)
2. No One To Depend On (C. Escovedo, G. Rolie, M. Carabello)
3. Taboo (J. Areas, G. Rolie)
4. Toussaint L'Overture (J. Areas, D. Brown, M. Carabello, G. Rolie, C. Santana, M. Shrieve)
5. Everybody's Everything (D. Brown, T. Moss, C. Santana)
6. Guajira (J. Areas, D. Brown, R. Reyes)
7. Jungle Strut (G. Ammons)
8. Everything's Coming Our Way (C. Santana)
9. Para Los Rumberos (T. Puente)

※1曲目、7曲目はインストゥルメンタルです。

一部のバージョンには、1971年7月4日にフィルモア・ウェストで行われたライブパフォーマンスからの音源がボーナストラックとして追加収録されています。

『サンタナIII』は、新たな才能を取り入れ、サウンドの幅を広げたサンタナの円熟期を捉えた作品として、現在も高く評価されています。特にツイン・ギター編成によるダイナミックな演奏は、その後のバンドの音楽性にも大きな影響を与えました。

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