サンタ・アナ (エル・サルバドル)

サンタ・アナ

サンタ・アナ（スペイン語: Santa Ana）は、エルサルバドル共和国の北西部に位置するサンタ・アナ県の県都であり、同名の地区や司教区の中心地でもあります。首都サン・サルバドルからは約65kmの距離にあり、国内では第2位または第3位の人口規模を持つ主要都市として、西部地域の核となっています。

行政上は34の「カントン」（cantón）と312の集落（caserío）に分かれ、中心市街地は12の地区（barrio）と多数の街区で構成されています。毎年7月17日から26日にかけては、県の守護聖人である聖アンナを讃える「7月の祝祭」が盛大に催されます。

歴史

サンタ・アナの歴史は古く、先古典期にはすでにマヤ文明の影響を受けた人々が定住していた痕跡が見られます。紀元250年のイロパンゴ湖噴火により一度放棄されたものの、5世紀から6世紀頃に都市が築かれたと考えられています。その後、この地はピピル族の支配下に入り、「聖職者の土地」を意味するシウアテウアカン（Sihuatehuacan）と呼ばれました。1200年頃からはクスカトラン領主権の中心地の一つとして発展しました。

16世紀に入り、スペイン人の征服を受けた後、この地はサン・サルバドル管轄地の一部となりました。1569年にはシウアテウアカンからサンタ・アナへと改称され、初めての教区が設置されました。植民地時代を通じて、司祭管区や州の中心として重要な地位を占めました。

19世紀初頭、自治体政府が設立され、サン・サルバドル独立反乱に際しては自治体内でも動きが見られました。1821年、自治体政府はスペインからの独立を宣言。その後、都市の地位を得て、1855年にはサンタ・アナ県が創設され、その県都となりました。19世紀末には、カルロス・エセータ政権に対する「44人革命」が勃発し、この都市出身の反乱者たちが重要な役割を果たしたことから、「英雄の街」の愛称で呼ばれるようになりました。

20世紀初頭は「コーヒー黄金時代」を迎え、コーヒー産業の中心地として国内随一の繁栄を享受しました。しかし、1980年から1992年までのエルサルバドル内戦では大きな被害を受け、人口流出も経験しました。内戦終結後は、主に米国からの送還者によるギャング組織「マラス」の活動など、犯罪増加という新たな課題に直面しましたが、政府や自治体は対策を講じています。また、内戦後、在外エルサルバドル人からの送金が経済的に重要な役割を果たすようになりました。20世紀末から21世紀初頭にかけては、都市開発計画が進められ、市街地の拡大と整備が進みました。

経済

サンタ・アナの経済は多様で、特に飲食業、食品販売業が盛んです。手工芸品（馬具、菓子、ブリキ製品など）の製造も行われ、工業製造業では繊維産業や食品関連産業、特にコーヒー豆の栽培と加工が重要な位置を占めています。

主要な経済分野としては、商業、サービス産業（金融、医療、教育を含む）、製造業、運輸業があり、これに農業関連産業、電力業、建設業、鉱業などが加わります。農業においては、コーヒー、サトウキビ、柑橘類、豆類などが代表的な産物です。また、家畜や家禽の飼育も行われています。鉱業では小石、砂利、粘土などが主に採掘されます。

製造業では、コーヒーや砂糖の加工に加え、ゴム製品、有機肥料、缶詰、皮革製品などの生産も行われています。市の北部や西部には工場が多く立地し、特にサンタ・アナ自由特区は輸出志向型の加工工場が集積しています。市の南部は商業地区として発展し、ショッピングセンターやレストラン、銀行などが集まっています。

商業は歴史的な中心地区に加え、郊外に開発された大型商業施設「メトロセントロ・デ・サンタ・アナ」を中心に発展しており、周辺の市町村からも多くの客を惹きつけています。グアテマラとの国際的な商業・貿易関係も重要です。市内には複数の市場があり、市民生活を支えています。

観光と文化遺産

サンタ・アナ市内および周辺地域には、訪れる人々を楽しませる多様な観光施設があります。ウォーターパークや温泉施設が点在し、特に歴史あるシウアテウアカン観光センターや、アパンテオス・アパンチャカルの温泉地などが知られています。また、エル・パルマール地区には闘牛場を含む公園があり、プールやスポーツ施設も備えた人気のレクリエーションスポットとなっています。北部にあるサン・ロレンソ・エコロジー・パーク（家族公園）では、様々な動物を観察できるほか、池や運動場があり、市民の憩いの場となっています。

文化遺産も豊富で、劇場、大聖堂、自治体庁舎など、歴史的建築物の多くが国指定文化財となっています。音楽家の功績を称える記念碑や、先古典期のピラミッド構造物が見つかったフィンカ・ロシータ遺跡（国指定遺跡）、トマス・レガラード元大統領の家（史跡）などもあります。

サンタ・アナの旧市街歴史地区は広範囲にわたり、劇場や大聖堂、自治体庁舎といった主要建築物のほか、博物館、歴史的邸宅、カジノなどが集積しています。中心部にある自由公園（Parque Libertad）の周囲には、市の象徴的な建物が立ち並び、多様な建築様式（新古典様式、ゴシック様式、ネオコロニアル様式など）の歴史的建造物が保存されています。

主な出身者

ヘヴィメタルドラマーとして知られるピート・サンドヴァル（後にアメリカ合衆国に移住）などがこの街の出身です。

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