サンタ・チェチーリア音楽院

サンタ・チェチーリア音楽院

サンタ・チェチーリア音楽院（Conservatorio Santa Cecilia）は、イタリアの首都ローマに所在する、長い歴史と伝統を誇る音楽院です。

歴史

音楽院の起源は16世紀に設立されたサンタ・チェチーリア国立アカデミアに遡ります。19世紀初頭から音楽院設立の必要性が認識され始めましたが、当初は教皇庁の理解を得られず、実現には至りませんでした。1869年、ジョヴァンニ・ズガンバーティが学生や低所得者層向けにピアノの無料レッスンを開始し、その後エットレ・ピネリがヴァイオリンの指導を始めました。これが音楽院の礎となり、1870年5月23日、正式に開校しました。当初は生徒数も少なく、2つの教室からのスタートでした。

イタリア王国成立後、ズガンバーティは無償での音楽教育を続けながら教師陣を拡充し、その活動が教育省の目に留まり、1875年には音楽高等学校として年間1万リラの予算を得るようになりました。その後、国や地方からの財政援助を受けてアカデミアから独立し、教員への給与支払いが可能となりました。1911年には法的に独立機関となり、1919年にはアカデミアから完全に分離して国立化され、現在のサンタ・チェチーリア音楽院となりました。

2020年には、新型コロナウイルス感染症の流行を背景に、当時の院長が東洋人学生に対し、医師の許可が出るまで授業参加を禁止するという措置を発表し、人種差別であると批判を浴びる事態も発生しました。この措置は、学生の権利を侵害し、差別と不当な恐怖を煽るものとして、多くの教員から非難されました。

編成

サンタ・チェチーリア音楽院は、作曲科、指揮科、オペラ科、器楽科、室内楽科など、非常に多岐にわたる学科を擁しています。世界各国から留学生を受け入れており、特にオペラ科は競争率が高く、入学が難しいとされています。

ボローニャ・プロセスに参画してからは、学士（3年）と修士（2年）の学位を取得できる、正規の高等教育機関としての地位を確立しています。1999年までは専門学校扱いでした。

著名な卒業生

サンタ・チェチーリア音楽院は、国際的に活躍する多くの音楽家を輩出しています。著名な卒業生として、以下のような人物が挙げられます。

アルド・クレメンティ（作曲家）
マリエッラ・デヴィーア（ソプラノ歌手）
ベニャミーノ・ジーリ（テノール歌手）
カルロ・マリア・ジュリーニ（指揮者）
スミ・ジョー（ソプラノ歌手）
ジャコモ・ラウリ＝ヴォルピ（テノール歌手）
ブルーノ・マデルナ（作曲家、指揮者）
アンナ・マニャーニ（女優）
フランコ・マンニーノ（作曲家）
エンニオ・モリコーネ（作曲家）
セルジオ・ペルティカローリ（ピアニスト）
ニーノ・ロータ（作曲家）

特色

音楽院には30万冊を超える蔵書を誇る図書館があり、音楽研究者や学生にとって重要な研究拠点となっています。豊富な資料は、音楽史や音楽理論の研究に大いに役立っています。

サンタ・チェチーリア音楽院は、長い歴史の中で数多くの音楽家を育て、イタリア音楽界だけでなく、世界の音楽シーンに多大な影響を与え続けている名門音楽院です。

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