スミ・ジョー

スミ・ジョー（Sumi Jo）は、韓国を代表する国際的なソプラノ歌手です。本名は韓国語でチョ・スミ（조수미、曺秀美）といい、その名前は世界中の主要なオペラハウスで知られています。

彼女の音楽キャリアは、ソウル大学校での学びを経て、イタリアのサンタ・チェチーリア音楽院で声楽と鍵盤楽器を学んだことから本格的に始まりました。故国韓国でのオペラデビューは、『フィガロの結婚』のスザンナ役でした。

国際的な舞台での注目を集めたのは、1988年、リヨン歌劇場でのロッシーニ作曲『オリー伯爵』におけるアデール伯爵夫人役を演じた後、その録音を行ったことからでした。この録音を通じて、指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤンが彼女の才能に気づき、オーディションへの参加を促しました。カラヤンは彼女の歌声を聴き、「神からの贈り物」と称賛した逸話は特に有名です。翌1989年、カラヤンの急逝という悲劇がありましたが、ゲオルク・ショルティ指揮、ジョン・シュレシンジャー演出によるザルツブルク音楽祭での公演にて、スミ・ジョーは同音楽祭への記念すべきデビューを果たしました。この公演は翌年の再演時にテレビで世界中に生中継され、日本を含む多くの国で放映されたことで、彼女の名声は一躍国際的なものとなりました（後にこの映像はDVD化されています）。

その後、彼女は世界の主要な歌劇場で引っ張りだことなり、特にコロラトゥーラ・ソプラノの難役を得意としました。『魔笛』の夜の女王役は彼女の十八番の一つであり、ウィーン国立歌劇場の日本公演で急な代役として見事に務め上げ、これが彼女の初来日でもありました。他にも、『ランメルモールのルチア』のルチアや、『ナクソス島のアリアドネ』のツェルビネッタなど、技巧と表現力を兼ね備えた役柄で喝采を浴びました。

オペラ活動に加え、映画やドラマといったメディアにも関わっています。1994年には、ロマン・ポランスキー演出の『ホフマン物語』オランピア役でパリ・オペラ座にデビューし、これを機にポランスキー監督の映画『ナインスゲート』の音楽でヴォカリーズを担当しました。また、2015年のパオロ・ソレンティーノ監督作品『グランドフィナーレ』には本人役で出演しています。さらに、韓国のドラマ作品では、多くの挿入歌を担当し、親しまれています。

彼女はキャリアを通じて、リチャード・ボニング、ズービン・メータ、ロリン・マゼールといった名指揮者や、アルフレード・クラウスのような著名な歌手たちと数多く共演してきました。録音活動も非常に活発であり、現在では古楽器オーケストラとの共演による録音も手がけるなど、その音楽性の幅広さを示しています。また、個人的なエピソードとしては、俳優のクォン・サンウのファンであることや、ミュージカル俳優KAIの芸名を考えたことなども知られています。

スミ・ジョーは、その類稀なる才能と努力により、韓国出身のオペラ歌手として世界的な地位を確立し、今なお第一線で活躍し続けています。

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