サンリオSF文庫

サンリオSF文庫の概要

サンリオSF文庫（サンリオ エスエフぶんこ）は、1978年から1987年にかけてサンリオが発行したSF文庫シリーズです。このレーベルは、SF小説に特化した〈叢書〉として知られ、創刊時にはアーシュラ・K・ル＝グインの『辺境の惑星』やフィリップ・K・ディックの『時は乱れて』、ウィリアム・S・バロウズの『ノヴァ急報』などがラインナップされています。サンリオSF文庫は、全197冊に及ぶ活動を展開し、小説だけでなく様々なジャンルの作品を網羅していました。

創刊と発行

文庫は1978年7月に創刊され、初年度に発行された作品は、一部著名な作家のものとともに、後のSF文庫賞を受賞するような作品も多数含まれていました。この文庫の特徴は、ニュー・ウェーブ、女性作家、英米以外の作品、さらにはSFを超えた怪奇小説やファンタジー、ミステリーといった多岐にわたる文体の作品群を取り揃えていたことです。特にフィリップ・K・ディックの作品は21冊に及び、その独特な世界観が多くの支持を得ました。

装丁とデザイン

サンリオSF文庫の装丁は、一貫したデザイン方針のもとに統一されており、全てのテキストはゴシック体で表記されていました。カバーにはイラストが施されており、加藤直之、角田純男、木嶋俊などのアーティストによるシュルレアリスティックな作品が多く見受けられました。カバー背部にはタコ型火星人のマークとともに、作家ごとの発行ナンバーが配され、番号とアルファベットの組み合わせが独自のコーディングシステムを形成していました。

宣伝活動

初期の頃は他の先行文庫との兼ね合いから慎重に運営されましたが、1980年代に入ると予算を2億円に引き上げ、本格的な宣伝活動が展開されました。これにより文庫の認知度が高まり、人気が加速していきました。しかし、商業的には決して順風満帆ではなく、続く時代においてさまざまな課題に直面しました。

終刊とその後の影響

1987年8月にフィリップ・K・ディックの『アルベマス』をもって終刊を迎えたサンリオSF文庫。その理由として、翻訳品をすべて出版し尽くしたこと、そして今後は子供向けやファミリー向け出版に主力を移していく方針が挙げられています。廃刊後、これらの作品は古書市場で高値で取引される時期があり、特に人気の高い作品は中古でも1500円から2000円という値段がつくことがありました。

新たな発表と存在意義

サンリオSF文庫は、その後も文学の一翼を担い続け、一部作品は他社によって再出版されたり、新訳が行われたものもあります。2014年には、サンリオSF文庫の全ての作品を網羅した『サンリオSF文庫総解説』が出版され、さらに2015年には星雲賞ノンフィクション部門を受賞しました。また、2024年5月時点で、約8割の作品が国立国会図書館のデジタルコレクションで公開されています。

このようにサンリオSF文庫は、当時の文庫市場に新たな風をもたらし、その多様性と独自性から今なお愛され続ける存在となっています。

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