サン・ジョヴァンニ洗礼堂

サン・ジョヴァンニ洗礼堂：フィレンツェの象徴

サン・ジョヴァンニ洗礼堂（Battistero di San Giovanni）は、フィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂（ドゥオーモ）に隣接する、ロマネスク様式の重要な建築物です。大聖堂の正面玄関と向かい合うように建つ八角形の建物で、集中形式の教会建築として知られています。その起源は4世紀から5世紀に遡るとされ、現在の建物は11世紀に建設が開始されたものです。かつてはローマ神殿であったとも考えられていましたが、洗礼者聖ヨハネに捧げられた洗礼堂として、フィレンツェの歴史を見守ってきました。

歴史

この洗礼堂は、初期ルネサンス期の建築家たちもローマ神殿が起源であると信じていました。屋根部分は1128年に、頂頭部のランターンは1150年に、そして司教座のある内陣は1202年に完成しました。当初はサンタ・レパラータ教会に代わって礼拝堂として使用されていましたが、サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂の建設に伴い、1355年から1375年にかけて改修され、洗礼を施す洗礼堂として利用されるようになりました。詩人のダンテ・アリギエーリもこの洗礼堂で洗礼を受け、『神曲』地獄篇で「わが美しき聖ジョヴァンニ」と称賛しています。

装飾

洗礼堂内部は、床がモザイク模様で覆われ、壁面は外装と同じように大理石による幾何学模様で装飾されています。天井には、13世紀のモザイク画『最後の審判』のほか、聖書にまつわる場面を描いたモザイク画が数多く飾られています。特に有名なのは、ロレンツォ・ギベルティが制作した東側の扉で、ミケランジェロが「天国への門」と絶賛したことで知られています。現在、洗礼堂に設置されている扉はレプリカで、本物はドゥオーモ付属博物館に所蔵されています。

扉の制作と競争

1401年には、北側の扉の製作者を決定するためのコンクールが開催されました。これは、コンクール形式で製作者が選ばれた最初の例とされています。ロレンツォ・ギベルティとフィリッポ・ブルネレスキが最終候補に残り、最終的にギベルティが選ばれたとされています。このコンクールは、ルネサンス美術の幕開けを告げる出来事として語り継がれています。北側の扉は1403年に制作契約が結ばれ、1424年に東側入口に設置されましたが、「天国への門」の完成に伴い、1452年に北側に移設されました。

洗礼盤とその他の装飾

洗礼堂内に残る洗礼盤は、1416年にドナテッロ、ロレンツォ・ギベルティ、ヤコポ・デラ・クエルチャらによって制作されました。また、洗礼堂にはアンドレーア・サンソヴィーノによる東側扉上彫刻『イエスの洗礼』、アンドレーア・ピサーノによる南側の扉『洗礼者ヨハネの生涯』、そしてドナテッロらによる『教皇ヨハネ23世墓碑』があります。

国家的な事業としての洗礼堂

12世紀に建設されたサン・ジョヴァンニ洗礼堂は、当時最も裕福だった毛織物商組合によって管理されていました。扉のコンクールは、黒死病の流行とミラノ公の侵攻という危機的な状況下で行われ、イサクの犠牲という主題には救国の意図が込められていたとされています。洗礼堂の装飾は、都市の共有財産としての責任を感じていた富裕市民層によって補われました。

拝観

サン・ジョヴァンニ洗礼堂は、1月1日、復活祭の日曜日、12月24・25日を除き、3ユーロで内部を見学することができます。この洗礼堂は、フィレンツェの歴史と芸術の粋を集めた、まさに必見の場所です。

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