サン・マルコ美術館

サン・マルコ国立美術館：ルネサンス美術と修道院の歴史が息づく場所

イタリア、フィレンツェのサン・マルコ広場に面して佇むサン・マルコ国立美術館は、かつてドメニコ会修道院として使用されていた建物を活用した美術館です。この美術館は、修道院の歴史と密接に結びついた美術品の数々を所蔵しており、特に修道士としてこの場所で暮らした画家フラ・アンジェリコの作品群は必見です。

建築と美術

サン・マルコ美術館は、建築家ミケロッツォの傑作として知られ、フィレンツェにおけるルネサンス建築の重要な例として数えられています。美術館内には、フラ・アンジェリコのフレスコ画や板絵のほか、フラ・バルトロメオ、ドメニコ・ギルランダイオ、アレッソ・バルドヴィネッティなど、ルネサンス期を代表する画家たちの作品が展示されています。また、フィレンツェが一時的に首都となった時代に取り壊された建物の遺構も保存されており、歴史的な価値も高い場所です。

歴史

修道院の始まり

この場所は、1300年以前にシルヴェストリーニ信徒会によって修道院として建てられました。当初は教区教会の機能も兼ね備えていましたが、15世紀初頭に修道院の規則が緩んだことが指摘され、ドメニコ会に譲渡されることになりました。この際、コジモ・デ・メディチの仲介が重要な役割を果たしました。

メディチ家による再建

1437年、コジモ・デ・メディチは、建築家ミケロッツォに修道院の再建を依頼し、ルネサンス様式を取り入れた新しい修道院が建設されました。1443年に完成したこの修道院は、メディチ家の庇護のもと、フィレンツェにおける重要な建築物の一つとなりました。再建に際し、コジモは4万フィオリーニ以上もの巨額な資金を費やしたと伝えられています。

修道院の構造

ミケロッツォが設計した修道院は、白の漆喰で塗られた壁面と、二つの中庭（サンタントニーノの回廊とサン・ドメニコの回廊）を中心に構成されています。1階には司教座聖堂参事会会議室、食堂、客人宿泊室があり、2階には修道士たちの独房が並んでいます。特に、図書室は穹窿天井を持つ開放的な空間で、ルネサンス期の人文主義者たちがメディチ家の貴重な蔵書を研究した場所として知られています。

サヴォナローラの時代

15世紀末には、ジローラモ・サヴォナローラがこの修道院に住み、修道院長を務めました。彼はフィレンツェの住民の華美な生活を批判し、教皇庁と対立しましたが、最終的には火刑に処されました。

美術館への転換

修道院はナポレオンによって一時的に接収された後、1866年に大部分が国有財産となり、1869年に美術館として一般公開されました。フラ・アンジェリコの作品は、この時期に修復が進められ、今日では美術館の主要なコレクションとなっています。また、1922年にはジョヴァンニ・ポッジの尽力により、フラ・アンジェリコの作品がウフィッツィ美術館やアカデミア美術館から移管され、そのコレクションはさらに充実しました。

美術館の見学

美術館は、サンタントニーノの回廊から始まり、フラ・アンジェリコによるフレスコ画やルネッタ装飾が見られます。旧宿泊所には、フラ・アンジェリコの板絵が展示され、旧司教座聖堂参事会修道院会議室には、彼のフレスコ画が残されています。また、洗面台の間、大食堂、フラ・バルトロメオの間など、修道院の歴史を感じさせる空間が続きます。

2階には、修道士たちの独房と図書館があります。特に、2階への階段を登ると目の前に現れるフラ・アンジェリコの傑作≪受胎告知≫は必見です。各独房には、フラ・アンジェリコによるフレスコ画が描かれており、修道士たちの静かな生活を垣間見ることができます。図書館は、ミケロッツォが設計した美しい空間で、ルネサンス期の雰囲気を今に伝えています。

まとめ

サン・マルコ国立美術館は、ルネサンス美術と修道院の歴史が融合した特別な場所です。フラ・アンジェリコの作品を中心に、ルネサンス期の美術を堪能できるだけでなく、修道院の建築や歴史的な背景も感じることができます。フィレンツェを訪れた際には、ぜひ足を運んでみてください。

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