フラ・バルトロメオ

フラ・バルトロメオ：信仰と芸術が交差した生涯

フラ・バルトロメオ（Fra Bartolomeo, 1472年3月28日 - 1517年10月31日）は、16世紀初頭のイタリア・ルネサンス期にフィレンツェで活躍した画家です。本名はバッチョ・デッラ・ポルタ（Baccio della Porta）といい、同時代の巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロらの影響を受けながらも、独自の古典的な宗教画を制作しました。

生涯：修道士としての転身と芸術への回帰

1472年にフィレンツェで生まれたバッチョは、コジモ・ロッセッリのもとで絵画の基礎を学びました。1491年頃には、同じくロッセッリに師事したアルベルティネッリと共同で工房を開きます。しかし、バッチョの人生に大きな転機が訪れます。ドミニコ会の急進的な指導者であったサヴォナローラの教えに深く感銘を受け、贅沢品と見なされていた当時の絵画から距離を置くようになります。サヴォナローラは、絵画は文字を読めない人々のための聖書の代わりとなるべきだと主張しました。1500年、バッチョはドミニコ会修道士としてサン・マルコ修道院に入り、フラ・バルトロメオと称するようになります（フラは修道士を意味します）。

修道士となったバルトロメオは、しばらくの間絵筆を置きますが、1504年に修道院内の工房の代表者となったことを機に制作を再開します。この時期、フィレンツェに拠点を移したラファエロと出会い、互いに影響を与え合います。バルトロメオは、年下のラファエロから遠近法の技法を学び、ラファエロはバルトロメオから色彩や衣服のひだの描写について学びました。また、レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロといった巨匠たちもフィレンツェに滞在しており、バルトロメオは彼らからも影響を受けました。これらの出会いは、彼の作品の構図や人物表現に大きな変化をもたらしました。1508年にはヴェネツィアを訪れ、ヴェネツィア派の華麗な色彩表現にも触れています。1514年にはローマに滞在し、ラファエロやミケランジェロの研究に励みました。

作風と評価：明暗法と繊細な描写

バルトロメオの作品は、祭壇画を中心に、明暗法、繊細な色彩、衣服のひだの巧みな描写を特徴としています。彼の描く人物像は、しばしば小さく、着衣の人物が多く見られます。そのため、彼の力量を低く評価する向きもありますが、福音書記者聖マルコの堂々とした肖像や、裸体の聖セバスティアヌスの肖像も描いています。聖セバスティアヌス像は、殉教の苦悶を生々しく表現したために、飾られていた女子修道院の礼拝堂から撤去せざるを得なかったというエピソードも残っています。

また、バルトロメオは、人物のポーズ研究のために関節が曲がるように作られた人形を用いた最初の画家であるとも言われています。

主要作品

『ポルキア』 1490-1495年（ウフィツィ美術館）
『ミネルヴァ』 1490-1495年（ルーヴル美術館）
『ジローラモ・サヴォナローラの肖像』 1498年頃（サン・マルコ美術館）
『最後の審判』 1499-1501年（サン・マルコ美術館） アルベルティネッリとの共作
『聖母の聖ベルナルドゥスへの顕現』 1504-1506年（ウフィツィ美術館）
『幼子イエスを礼拝する聖母と聖ヨセフ』 1511年以前（ロンドン・ナショナル・ギャラリー）
『聖カタリナの神秘の結婚』1511年（ルーヴル美術館）
『福音書記者聖マルコ』 1514年（ピッティ美術館）
* 『神殿奉献』 1516年（美術史美術館、ウィーン）

フラ・バルトロメオは、修道士としての信仰と芸術家としての才能を両立させ、ルネサンス美術に独自の足跡を残した画家です。彼の作品は、その繊細な描写と宗教的な情感により、多くの人々を魅了し続けています。

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