サン・マルタ館

サン・マルタ館について

サン・マルタ館（Domus Sanctae Marthae）は、バチカン市国に位置し、サン・ピエトロ大聖堂のすぐ隣に建っています。この建物は1996年に完成し、教皇ヨハネ・パウロ2世の時代に造られました。名称は聖書のベタニアのマルタに由来しており、聖職者やコンクラーヴェの参加者の宿泊施設として、さまざまな役割を果たしています。

教皇フランシスコとサン・マルタ館

教皇フランシスコは、2013年のコンクラーヴェで選出された後から、サン・マルタ館を彼の住居として利用しています。彼の寝室には、木製の十字架やアルゼンチンの守護聖人であるルハンの聖母の小さな彫像が飾られています。また、教皇の安全を守るために、常に二人のスイス傭兵が警備にあたっています。

建物の設計と設備

サン・マルタ館は、全体で106のスイートルームと22の客室を有する5階建ての建物です。設計は、枢機卿や聖職者がコンクラーヴェに参加する際に、より快適な環境を提供するために行われました。教皇ヨハネ・パウロ2世は、宿泊施設の供給先として国務省の職員やその他の教皇庁の職員も含めるよう求めました。このため、教皇庁に訪れる枢機卿や司教にとっても重要な場所となっています。

サン・マルタ館内には、寝室や洗面所、書斎があり、快適なダイニングエリアと人的サービスも整っています。かつて駐バチカンアメリカ合衆国大使を務めたメアリー・アン・グレンダンは、「豪華ではないが、快適である」とその宿泊体験を語っています。

教皇ミサとホスピスの歴史

こうした宿泊施設が設けられる背景には、1881年から1896年にかけてのコレラ流行があります。教皇レオ13世は、同じ場所にサン・マルタ・ホスピスを建設。戦時中は、難民やユダヤ人などが避難所として利用しました。このホスピスは、やがてバチカンに奉職する高位聖職者の住居となります。

コンクラーヴェとその意義

サン・マルタ館は、2005年及び2013年のコンクラーヴェでも利用されました。参加する枢機卿は、外部から隔絶された環境で投票を行うため、携帯電話やテレビなどの通信機器が使用できません。これにより、集中して新しい教皇を選出することができます。

教皇の居住選択

2013年3月、教皇フランシスコは、バチカン宮殿ではなく、サン・マルタ館の201号室に居住することを発表しました。これにより、彼はピウス10世以降、バチカン宮殿に住まない初めての教皇となります。身の回りに人々がいる環境を大切にしている彼は、宿泊者と同じ朝食を共にしつつ、生活をしています。このような選択は、彼の信条や生き方を反映していると言えるでしょう。

サン・マルタ館は、単なる宿泊施設にとどまらず、教皇の生活や聖職者の交流の場として、バチカンの重要な一部となっています。

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