サヴォイ・カクテルブック

『サヴォイ・カクテルブック』は、1930年に初版が発行された、カクテルレシピに関する書籍です。ロンドンの名門ホテル「サヴォイ・ホテル」のチーフ・バーテンダーであったハリー・クラドックによって編纂されました。

この本は「カクテル・ブックの古典中の古典」と称されるほど、カクテル界において非常に重要な位置を占めています。収録されているカクテルの名前は、古典的なものが多いため、現代から見ると古めかしい印象を受けるかもしれません。しかし、その名前の背後には、禁酒法時代のアメリカからロンドンへ渡ったクラドックの視点を通して見た、当時のハイソサエティーの優雅さと華やかさが垣間見えます。

単なる技術書としてではなく、各カクテルに添えられた短いコメントや、古風な名前から、当時の社交界の雰囲気を想像することができます。クラドックは、禁酒法時代のアメリカを離れ、ロンドンでバーテンダーとして活躍しましたが、その経験がこの本に独特の魅力をもたらしています。

また、この本には、クラドックとは別の人物によって書かれたワインに関する記述が、全体の1/5以上を占めています。カクテルだけでなく、ワインについても学ぶことができるため、お酒に関する知識を深めたい人にとって、貴重な情報源となるでしょう。

『サヴォイ・カクテルブック』は、初版発行後も、1952年、1965年、1985年、1996年に再版され、1999年と2014年には改版も行われています。長年にわたり、多くの人々に愛され続けていることがわかります。

この本は、単なるカクテルレシピ集としてだけでなく、20世紀初頭の社交界の文化や、禁酒法時代のアメリカの歴史を感じることができる貴重な資料としても価値があります。カクテル愛好家だけでなく、歴史や文化に興味がある人にもおすすめの一冊です。

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