サーチ・ギャラリー

サーチ・ギャラリー：現代美術の殿堂

サーチ・ギャラリーは、ロンドンを代表する現代美術専門の美術館です。その歴史は、広告業界で成功を収めたアートコレクター、チャールズ・サーチが自身のコレクションを公開するために1985年に開設した個人ギャラリーに遡ります。当初はアメリカやドイツの戦後美術を中心に扱っていましたが、1980年代後半から、まだ無名だったイギリスの若手アーティストたちの作品に焦点を当てるようになりました。

ヤング・ブリティッシュ・アーティスト（YBA）との出会い

サーチは、美術大学の卒業展やオルタナティブスペースの展覧会で、才能ある若手アーティストたちを発掘しました。当時、サッチャー政権下での芸術支援の削減により、多くの若手アーティストは商業ギャラリーに相手にされず、自主的に展示活動を行っていました。そうした中で、サーチはダミアン・ハーストのような才能あるアーティストを見出し、その作品を積極的に購入しました。これらのアーティストたちは、後に「ヤング・ブリティッシュ・アーティスト（YBA）」と呼ばれるようになり、1990年代のイギリス美術界を牽引する存在となっていきました。

YBAの作品は、その過激さや反抗的な姿勢から、美術ファンやマスメディアから大きな注目を集めました。サーチ・ギャラリーは、YBA作品の最大の保護者として、彼らの作品を積極的に展示し、世に広める役割を果たしました。

センセーション展と賛否両論

1997年にロイヤル・アカデミーで開催された「センセーション展」は、サーチ・コレクションを中心とした展覧会で、多くの賛否両論を巻き起こしました。特に、殺人犯の肖像画が展示されたことは物議を醸し、展覧会はメディアで大きく取り上げられました。しかし、この展覧会をきっかけに、イギリス現代美術は一般の人々にも広く認知されるようになり、若い世代からは最先端のポップな文化として受け入れられるようになりました。

ギャラリーの移転と変遷

2003年、サーチ・ギャラリーは旧ロンドン市庁舎であるカウンティ・ホールに移転しました。旧庁舎の重厚な空間は、巨大なインスタレーション作品を展示するのに適しており、より多くの人々がコレクションに触れる機会が増えました。しかし、2005年にはカウンティ・ホールから撤退し、チェルシー地区に新たなギャラリーをオープンすることになりました。

この時期から、サーチの興味はイギリス国外の若手アーティストにも広がり、YBAの作品を手放す一方で、ヨーロッパや中国のアーティストの作品を収集し始めました。2008年にチェルシーで再オープンした際には、中国現代美術の展覧会を開催しました。

サーチ・オンラインの展開

ギャラリーの休館期間中、サーチは「サーチ・オンライン」というウェブサイトを開設しました。このサイトは、世界中のアーティストが自身の作品をアップロードして公開できるプラットフォームです。アマチュアからプロまで、多くのアーティストがこのサイトを通じて自身の作品を世界に発信し、また作品の販売も行えるようになっています。サーチ・オンラインは、アート界の民主化に貢献し、多くのアーティストに新たな活躍の場を提供しました。

サーチ・オンラインでは、展覧会のスポットを獲得するための競技会や、オンラインで作品を制作する機能、批評家が選ぶオンラインスタジオ、世界中の美術館を紹介するセクションなど、多様なコンテンツが提供されています。

その後

サーチ・オンラインは、2014年にデマンド・メディアに売却され、「SaatchiArt.com」としてリブランディングされました。SaatchiArt.comは、現在もアーティストが自身の作品を販売できるオンラインマーケットプレイスとして機能しています。

サーチ・ギャラリーは、現代美術の発展に大きな影響を与えた美術館であり、その動向は世界中のアートファンから注目されています。

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