サードウェーブコーヒー

サードウェーブコーヒー：コーヒーの第三の波

サードウェーブコーヒーとは、2000年代初頭からアメリカを中心に広がった、コーヒー文化における第三の潮流を指します。これは、19世紀後半から20世紀にかけてのインスタントコーヒー普及期（第一波）、そして1960年代から2000年代初頭のシアトル系コーヒーに代表される、コーヒーの風味を重視した第二波に続く、新たなコーヒーのムーブメントです。

サードウェーブの特徴

サードウェーブコーヒーは、コーヒーを単なる生活必需品としてではなく、ワインのように芸術性を兼ね備えた高品質な食品として捉える点が大きな特徴です。コーヒー豆の栽培から収穫、生産処理、選別、品質管理に至るすべての工程で、徹底的な品質管理が行われ、欠点豆の混入を極限まで減らす努力がなされています。また、消費者はコーヒーの風味、品種、産地などの特性を理解し、より深く楽しむことが求められます。

• - 高品質な豆: シングルオリジン（単一の農園や地域で栽培された豆）や、トレーサビリティが確保された豆が重視されます。
• - 浅煎り: 豆本来の風味を最大限に引き出すため、浅煎りの焙煎が一般的です。
• - 丁寧な抽出: ハンドドリップやサイフォンなど、丁寧に抽出する方法が用いられます。
• - ラテアート: 視覚的にも楽しめるラテアートも、サードウェーブコーヒーの重要な要素です。
• - コーヒー器具の再評価: コーヒーサイフォン、ケメックス、HARIOなどの器具が見直され、コーヒーを淹れる行為自体が楽しまれます。

これらの特徴は、地ビールのように個性的な商品が人気を集める傾向と類似しています。ワインや茶、チョコレートのような他の嗜好品と同様に、コーヒーの風味や品種、産地の特性を理解し、楽しむという新しいコーヒーの価値観が生まれています。

歴史

「サードウェーブ」という用語は、2002年にアメリカのコーヒー業界関係者によって提唱されました。しかし、その萌芽は1990年代に現れ始め、1960年代や1970年代のコーヒー文化にもその源流を見出すことができます。アメリカだけでなく、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、スカンジナビア諸国など、世界各地に同様の潮流が存在します。

日本では、2015年にブルーボトルコーヒーが再上陸したことをきっかけに、サードウェーブコーヒーの認知度が高まりました。しかし、日本には古くから独自の喫茶店文化があり、特に「純喫茶」と呼ばれる店では、サードウェーブコーヒーに通じるような、一杯ずつ丁寧に淹れるコーヒーを提供する店も存在していました。また、1970年代にはコーヒー専門店ブームが起こり、高品質なコーヒーへの関心は以前から存在していました。そのため、日本のコーヒー業界では「むしろ『昭和回帰』」と捉える見方もあります。

スペシャルティコーヒーとの関係

より広義には、サードウェーブコーヒーはスペシャルティコーヒーの一部であると見なすことができます。スペシャルティコーヒーとは、高品質なコーヒー豆を使い、適切な焙煎と抽出によって、その豆が持つ最高の風味を引き出すことを目指すコーヒーのことです。

主なブランド

• - ブルーボトルコーヒー・カンパニー
• - フォーバレルコーヒー
• - スタンプタウン・コーヒー・ロースターズ

これらのブランドは、サードウェーブコーヒーのトレンドを牽引する存在として知られています。

まとめ

サードウェーブコーヒーは、コーヒーに対する新たな価値観を提示するものです。単なる飲み物としてではなく、風味や産地、生産過程にまでこだわり抜かれた、高品質な食品としてコーヒーを楽しむ。その芸術性を追求する潮流は、今後もコーヒー文化を大きく変えていくことでしょう。

もう一度検索