サービスプロバイダ

サービスプロバイダとは

サービスプロバイダとは、顧客に対して何らかのサービスを提供する企業や組織を指します。これらのプロバイダは、顧客との間でサブスクリプション契約を結び、顧客の具体的なニーズに合わせたシステムや商品を提供します。

サービス提供にあたっては、自社でシステムや製品を開発・生産するだけでなく、他社から調達することも含まれます。提供後も、顧客やユーザーが安定してサービスを利用できるよう、運用と保守を行う責任があります。特に、現代においては、サービスプロバイダが提供するサービスの多くがITサービスである点が特徴的です。

インターネットサービスプロバイダ (ISP) を例にしたサービス提供形態

最も一般的なサービスプロバイダの例として、インターネットサービスプロバイダ（ISP）が挙げられます。ISPは、インターネット接続サービスを提供しており、「プロバイダ」という言葉自体がISPを指すほど、その存在は広く認知されています。

1. 顧客はISPにインターネット接続サービスの利用を申し込みます。
2. ISPは、NTT東日本のような回線事業者（キャリア）に対して回線工事と回線利用を申し込みます。
3. ISPと回線事業者間で契約が締結されると、ISPから顧客に対してPPPoE接続用のアカウント情報が提供されます。
4. 顧客は、回線工事費や事務手数料などの初期費用を支払い、その後は毎月定額の料金をISPに支払います。
5. ISPは、顧客に対してカスタマーサポートやヘルプデスクを提供し、問い合わせ対応や不具合対応を行います。

ISPは、自身で回線を保有しているわけではなく、インターネット接続を提供する立場であるため、サービスプロバイダに分類されます。回線を提供する企業や組織は「サプライヤ」と定義されます。

ただし、NTTドコモやソフトバンクのように、自社で通信回線を保有し、インターネット接続サービスも提供する企業は「電気通信事業者（キャリア）」と呼ばれ、サービスプロバイダとは区別されます。

サービスプロバイダの種類

サービスプロバイダには、以下のような様々な種類があります。

アプリケーションサービスプロバイダ (ASP)
クラウドサービスプロバイダ (CSP) - IaaS、PaaS、SaaSなどのクラウドサービスを提供する
ネットワークサービスプロバイダ (NSP)
インターネットサービスプロバイダ (ISP)
マネージドサービスプロバイダ (MSP)
マネージドセキュリティサービスプロバイダ (MSSP)
ストレージサービスプロバイダ (SSP)
テレコミュニケーションサービスプロバイダ (TSP)
SAMLサービスプロバイダ
マスターマネージドサービスプロバイダ (MMSP)
マネージドインターネットサービスプロバイダ (MISP)
オンラインサービスプロバイダ (OSP)
ペイメントサービスプロバイダ (PSP)

ITILにおけるサービスプロバイダ

ITIL（Information Technology Infrastructure Library）は、ITサービスマネジメントのベストプラクティスを集めたフレームワークです。ITIL v3のサービスデザインでは、「サービス管理プロセス」の中で、サービスプロバイダの詳細なモデルが紹介されています。これは、サービスを安定的に運用するためのノウハウ集として活用されています。

ステークホルダー

サービス管理プロセスにおけるステークホルダーとその役割は以下の通りです。

ユーザ (user): サービスプロバイダが提供するサービスの利用者。
顧客 (customer): サービスプロバイダが提供するサービスの購入者。
サプライヤ (supplier): サービスを構成するインフラや部品を提供する企業または組織。
サービスプロバイダ (Service Provider): サプライヤから受け取ったものを基にサービスを構築し、顧客に提供する。また、顧客が自身でサービスを利用する場合は、顧客がユーザーを兼ねる場合もあります。

サービス構築形態

サービスプロバイダは、通常サプライヤから購入したインフラを利用してサービスを構築します。その構築形態には、主に以下の3つのパターンがあります。

1. 独自サービス開発: サプライヤから購入した物品を基に、独自のプログラムやシステムを開発しサービスを提供します。
2. 既存パッケージ運用: サプライヤが既に開発済みのシステムを購入し、サービスプロバイダはユーザサポートを中心に行います。環境に合わせて若干のチューニングを行う場合もあります。
3. 契約形態: サービス提供期間中は、通常サブスクリプション契約となり、サービスに対するサポートも提供されます。

サービスプロバイダのタイプ別モデル

ITILでは、サービスプロバイダを以下の3つのタイプに分類しています。

Type1（内部サービスプロバイダ）: 企業内の1部門が、自社向けにサービスを提供するタイプ。
例：ある商社の情報システム部が、各部門のシステム構築を支援するため、クラウドサービスを提供。
Type2（シェアドサービスプロバイダ）: 企業内の複数部門が共同でサービスを構築し、自社向けに提供するタイプ。Type1との違いは、複数の部門が共同でサービスを管理している点です。
例：ある商社の人事部、総務部、財務部が共同で社員向けイントラサイトを運営し、Web給与明細や各種申請、会議室予約、資産管理などを提供。
Type3（外部サービスプロバイダ）: 自社で構築したサービスを他社に提供するタイプ。他社が構築・運用していたシステムの管理代行も含まれます。
例1：ある商社が、病院向けに電子カルテサービスを提供し、カルテ管理の効率化を支援。
例2：ある商社が、ショッピングモールの親会社から委託を受け、ECサイトの運営を代行。

サービスプロバイダは、現代社会において不可欠な存在となっています。その役割は多岐にわたり、IT技術の発展と共にその重要性はますます高まっています。

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