サービス・ロケーション・プロトコル

サービスロケーションプロトコル（SLP）とは

サービスロケーションプロトコル（SLP）は、ネットワークに接続されたデバイスやアプリケーションが提供するサービスを、クライアントが動的に発見するための通信プロトコルです。IETFによってRFC 2165およびRFC 2608で標準化されています。主に企業内ネットワークのような、管理された環境での利用を想定しており、インターネットのような広範なネットワークでの利用は考慮されていません。

SLPの概要

SLPは、サービスの種類や属性に基づいてネットワークサービスを検索することができます。属性指定検索にはRFC 3059で標準化された属性リスト拡張が使用されます。SLPはシンプルなバイナリプロトコルでありながら、サービス名や属性には可変長の文字列を使用するため、HTTPに匹敵する拡張性を持っています。また、SLPはサービスが使用するプロトコルに依存しないため、Web、電子メール、リアルタイム通信など、さまざまなサービスの発見に利用できます。

SLPの動作原理

SLPにおけるサービス検索は、主に以下の2つの方法で行われます。

1. 分散型検索（ディレクトリ不使用）
- ユーザーエージェントがマルチキャストを使用して、ネットワーク上のサービスエージェントに直接質問を送信し、サービスエージェントがユニキャストで応答します。

2. 集中型検索（ディレクトリ使用）
- ユーザーエージェントが、事前に知っているディレクトリエージェントに対してユニキャストで質問を送信します。サービスエージェントは、あらかじめディレクトリエージェントにサービスを登録しておきます。

これらの方法を組み合わせて、マルチキャストを使用した質問にディレクトリエージェントが応答することも可能です。

サービス広告

サービスエージェントは、サービスURLとサービステンプレートを使用してサービスを宣伝します。以下は、ネットワークプリンタのサービステンプレートの例です。


service:printer://lj4050.tum.de:1020/queue1
scopes = tum, bmw, administrator
printer-name = lj4050
printer-model = HP LJ4050 N
printer-location = Room 0409
color-supported = false
pages-per-minute = 9
sides-supported = one-sided, two-sided

SLPの特性

SLPは要求ドリブンプロトコルであり、ユーザーエージェントが要求を送信しない限り、サービスエージェント側の変更は通知されません。しかし、RFC 3082で実験された通知/サブスクリプション機能を利用すれば、イベントドリブンなサービス発見も可能ですが、この機能は標準化されていません。

SLPのAPI

RFC 2614には、C言語でのSLPのAPI例が紹介されています。主要な関数は以下の通りです。

サービス登録関数 `SLPReg()`

サービスを管理情報に登録します。

c
SLPError SLPReg(SLPHandle hSLP, const char pcSrvURL, const unsigned short usLifetime,
const char pcSrvType, const char pcAttrs, SLPBoolean fresh,
SLPRegReport callback, void pvCookie);

サービス登録解除関数 `SLPDereg()`

管理情報からサービス登録を解除します。

c
SLPError SLPDereg(SLPHandle hSLP, const char pcURL, SLPRegReport callback, void pvCookie);

サービス属性削除関数 `SLPDelAttrs()`

管理情報からサービス属性を削除します。

c
SLPError SLPDelAttrs(SLPHandle hSLP, const char pcURL, const char pcAttrs,
SLPRegReport callback, void pvCookie);

サービス検索関数 `SLPFindSrvTypes()`

管理情報からサービス型を検索します。

c
SLPError SLPFindSrvTypes(SLPHandle hSLP, const char pcNamingAuthority,
const char pcScopeList, SLPSrvTypeCallback callback,
void pvCookie);

サービス検索関数 `SLPFindSrvs()`

管理情報から指定されたサービス型のサービスを検索します。

c
SLPError SLPFindSrvs(SLPHandle hSLP, const char pcServiceType, const char pcScopeList,
const char pcSearchFilter, SLPSrvURLCallback callback,
void pvCookie);

サービス属性検索関数 `SLPFindAttrs()`

管理情報からサービス属性を検索します。

c
SLPError SLPFindAttrs(SLPHandle hSLP, const char pcURLOrServiceType, const char pcScopeList,
const char pcAttrIds, SLPAttrCallback callback, void pvCookie);

SLPの実装例

SLP Version 1は、Hewlett Packard（HP）社のJetSend技術でプリンタやデジタルカメラに採用され、他社製品にも使用されています。SLP Version 2も、HPのWeb JetAdminやSun Microsystems社のSolaris 8などに採用されています。

AppleのMac OSでは、初期バージョンからAppleTalkによるサービス発見が可能でしたが、Mac OS 8.5からSLP Version 1も採用されました。Mac OS 9ではSLP Version 2に移行しましたが、Mac OS X v10.2 Jaguar以降はRendezvous(Bonjour)の導入によりSLPの重要性が薄れ、Mac OS X 10.5 LeopardでSLPは廃止されました。オープンソースの実装としては、OpenSLPがあります。

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