サーブ 2000

サーブ2000：高速ターボプロップ機の挑戦と終焉

サーブ2000は、スウェーデンの航空機メーカーであるサーブ社が開発した、50～58席クラスのターボプロップ双発旅客機です。同社が成功を収めたコミューター機、サーブ340の後継機として、より高速で効率的な地域航空輸送を目指して開発されました。1988年に開発が開始され、スイスのクロスエアからの確定発注を契機に正式にプロジェクトが始動しました。

機体の基本構造はサーブ340を踏襲しており、特に胴体は340と同じ断面を7.55m延長したものです。しかし、単なるストレッチ型ではなく、ターボプロップ機でありながらジェット機並みの性能を目指した、全く新しい設計の機体です。開発の最大の目標は、ジェット機と同等の巡航高度と速度を、ターボプロップ機の優れた経済性で実現することでした。

この目標を達成するため、サーブ2000は高速巡航性能に優れており、時速665km以上での飛行が可能です。また、騒音レベルを低く抑えることにも成功しました。機体の製造は、国際分業体制で行われ、主翼はスペインのCASA、後部胴体はイギリスのウエストランド・エアクラフト、尾翼はフィンランドのヴァルメトが担当しました。1992年3月26日に初飛行を行い、1994年9月に商業運航を開始しました。

サーブ2000は、低翼配置の直線翼を採用し、垂直尾翼には前方に伸びるフィンが取り付けられています。エンジンは、ロールスロイス（旧アリソン）が開発した新型ターボプロップエンジンAE2100を搭載し、最大出力は2,722kWです。プロペラは6枚ブレードで、低騒音化に貢献しています。コックピットはグラスコックピットを採用し、最新の航空技術が導入されています。

サーブ2000は、操縦輪の操作でオートパイロットを解除できないという、他機にはあまり見られない特徴を持っています。このシステムが原因で、過去に重大インシデントが発生したこともあります。

生産と運用、そして市場からの撤退

サーブ2000は、クロスエアをはじめとする複数の航空会社で運用されました。また、日本の運輸省（当時）航空局も飛行点検機として導入しました。しかし、販売が伸び悩み、1999年に生産が中止されました。生産機数は63機にとどまりました。

販売不振の主な原因は、50席クラスの地域航空路線市場において、エンブラエルERJ145やボンバルディアCRJなどの低価格なジェット旅客機が登場し、競争力を失ったことです。この結果、サーブ社は旅客機市場から撤退することとなりました。

派生型

サーブ2000 AEW&C：サーブ2000をベースにした早期警戒管制機です。エリアイレーダーを搭載し、パキスタン空軍やサウジアラビア空軍で採用されています。

関連

* サーブ340

サーブ2000は、ターボプロップ機でありながらジェット機並みの性能を目指した意欲的な機体でしたが、市場のニーズの変化と競争激化の波に乗り切れず、短期間で姿を消すこととなりました。しかし、その開発で培われた技術は、他の航空機開発に活かされています。

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