サーモグラフィー

サーモグラフィーの概要

サーモグラフィー（英: thermography）とは、物体から放出される赤外線を解析し、その熱分布を視覚的に示す技術です。すべての物質は絶対温度に応じた赤外線を発生させ、その強度は温度の4乗に比例します。この法則を基に、特別なカメラを用いて対象物の赤外線を捉え、温度の分布を画像化することが可能です。

医療におけるサーモグラフィーの利用

医療分野では、体表面の温度分布を測定し、さまざまな疾患の診断に役立てられています。乳がんや手足の血流障害などの診断に対して、画像を色分けすることで可視化し、疾患の兆候を探ります。

主な適用疾患

1. 血行障害：動脈の狭窄や閉塞、動静脈瘤、リンパ浮腫など、血流に影響を与える疾患の診断、治療経過の観察に使用されます。
2. 代謝異常：皮膚や皮下組織に関連する多くの疾患の診断に役立てられます。
3. 慢性疼痛：慢性的な痛みの原因を探るため、頭痛や神経痛などの筋神経疾患の評価にも利用されています。
4. 自律神経障害：自律神経系に影響を与える疾患や、神経ブロックの効果を評価するために使用されます。
5. 炎症：急性炎症やリウマチ様の慢性炎症の経過観察と治療効果の判定にも適しています。
6. 腫瘍の発見：特に乳房や甲状腺、皮膚の腫瘍検出に効果的です。
7. 体温異常：温度調整に関連した疾患の兆候を把握できます。

医療用サーモグラフィーは、診療報酬が適用される診断機器として、最近ではレンタルサービスも登場し、充実したサービスが提供されています。また、新型インフルエンザなどのウイルス検査にも利用され、安全で迅速な体温測定手法として注目されています。

建築分野での応用

建築の分野では、サーモグラフィーを用いて外壁や屋根の状態を調査します。特に、タイルの浮きや断熱の劣化、雨漏りの経路調査などに役立つとされています。タイルの浮きは、タイルとモルタル間に空気層ができることによって引き起こされ、温度差を利用してそれを判断できます。加えて、木造建築物の内部構造をチェックする目的でも使用されています。

設備メンテナンス

電気設備のメンテナンスにおいても、サーモグラフィーは不可欠なツールです。接触不良や劣化した部品は、周囲の温度を上昇させるため、故障の早期発見に役立ちます。

軍事での利用

最近では、軍事分野でサーモグラフィーの技術応用が増加しています。熱線暗視装置（thermal imager）と呼ばれる装置は、対象物を見つけるために使用され、悪条件下でも対象物を発見する能力があります。具体的には、霧や煙の中での視認性を向上させ、光源がなくても温度差を利用して目標を確認することができます。1990年代以降、技術革新が進み、航空機や軍用車両への搭載が進んでいます。

まとめ

サーモグラフィーは、医療、建築、設備点検、軍事など、さまざまな分野で活用されている画期的な技術です。温度の可視化による迅速かつ効果的な評価が可能となり、多くの人々の健康や安全を支えています。今後もさらにその適応範囲は広がるでしょう。

もう一度検索