ザウスキ図書館

ザウスキ図書館：ポーランド初の公共図書館の興亡

ザウスキ図書館は、18世紀にポーランド・ワルシャワでザウスキ兄弟によって設立された、ポーランド初の公共図書館であり、ヨーロッパにおいても初期の公共図書館の一つとして知られています。その規模は当時としては最大級で、ポーランドの知の殿堂として重要な役割を果たしました。

歴史

設立と発展

1747年、カトリック司教であったザウスキ兄弟（ユーゼフ・アンジェイとアンジェイ・スタニスワフ）は、自分たちの蔵書を一般に公開することを決意し、ザウスキ図書館を設立しました。当時のヨーロッパにおいて、これほど大規模な蔵書を持つ図書館は数えるほどしかなく、ザウスキ図書館は瞬く間に知的な拠点として注目を集めました。

初期の蔵書は約20万点でしたが、1770年代末には約40万点にまで増加しました。その内容は印刷物、地図、写本、原稿など多岐にわたり、芸術作品、科学機器、動植物の標本なども含まれていました。図書館は火曜日と木曜日の午前7時から午後7時まで開館し、誰もが自由に利用することができました。

運営と課題

図書館の利用者は、静かに利用すること、そしてザウスキ兄弟のために祈ることを求められました。本の持ち出しは禁止されていましたが、盗難が頻発し、ザウスキ兄弟はローマ教皇に助けを求めました。教皇ベネディクトゥス14世は、図書館の本を盗む者を破門するという教皇勅書を発布しましたが、盗難を完全に防ぐことはできませんでした。

ザウスキ兄弟の死後、図書館の運営は国家教育委員会に移管され、「ザウスキ兄弟共和国図書館」と改名されました。

蔵書の散逸

1794年、コシチュシュコの蜂起を鎮圧したロシアのエカチェリーナ2世は、ザウスキ図書館の蔵書を全て没収し、サンクトペテルブルクへ移送しました。これらの蔵書は、翌年に創設された帝国公共図書館の基盤となりました。移送の際に多くの蔵書が損傷、破壊、盗難に遭いました。

その後、蔵書はロシア各地の図書館に分散されましたが、1842年と1863年には一部がポーランドに返還されました。1920年には、リガ平和条約に基づき、ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国政府が約5万点の資料をポーランドに返還しました。

ワルシャワ蜂起と図書館の終焉

しかし、1944年のワルシャワ蜂起後、ドイツ軍はワルシャワを徹底的に破壊する際に、ザウスキ図書館の蔵書を意図的に破壊しました。戦後、残されたのはわずか1800点の写本と3万点の印刷物のみでした。

その後

1821年、図書館の建物はテラスハウスに改造されました。その際、ポーランド分割時代に隠されていたポーランド君主の胸像が発見され、建物の正面に設置されたため、建物は「王様の家」と呼ばれるようになりました。この建物も第二次世界大戦中にドイツ軍によって破壊されましたが、戦後に再建されました。

現在のポーランド国立図書館（1928年創立）は、ザウスキ図書館の精神を受け継ぐものとされています。

ザウスキ図書館は、ポーランドの文化と知識の象徴でしたが、戦乱によってその多くが失われてしまいました。しかし、その精神はポーランド国立図書館に受け継がれ、今もポーランドの知の発展に貢献しています。

関連項目

ヤギェウォ図書館
ベルリンカ

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