ヤギェウォ図書館

クラクフに位置するヤギェウォ図書館は、ヤギェウォ大学の附属図書館であり、ポーランドを代表する学術機関の一つです。約670万冊の蔵書は国内最大級の規模を誇り、大学図書館として教育研究を支える一方、ポーランド国立図書館システムの一部としても機能しています。貴重な中世写本や共産主義政権下の地下出版物など、歴史的に重要なコレクションを有することで知られています。

歴史

図書館の起源は1364年、母体であるクラクフ・アカデミー（現在のヤギェウォ大学）創立に遡ります。当初は各学部の建物に分散していましたが、1399年のポーランド王ヴワディスワフ2世とその妃ヤドヴィガ女王による寄付が、アカデミーの再興と共に図書館機能の拡充を促しました。特にヤドヴィガ女王は図書館を厚く庇護し、1400年には自身の財産を図書館のために遺贈しています。しかし、急速な発展に対するスペース不足に加え、1492年には火災でコレギウム・マイウスの主要な図書館が焼失しました。再建は困難でしたが、教授たちの募金や偶然発見された金の箱により実現し、その後の資料収集も進みました。

1775年、世界初の教育省とされる国民教育委員会の改革により、分散していた蔵書がコレギウム・マイウスの中央図書館へと統合されます。ポーランド分割という困難な時代にあっても、イェジー・サミュエル・バンドキーやエストライヒャ家の人々といった支援者のおかげで図書館の発展は続き、1812年には一般に公開されました。1932年からは、ポーランド国内で発行された全ての出版物を収集する法定納本図書館となっています。1940年には新しい建物が完成しました。

第二次世界大戦中、ドイツ監督下でクラクフ国立図書館として機能しましたが、図書館職員は秘密裏に地下大学の活動を支援しました。戦後さらに発展し、1979年にはワルシャワの国立図書館と並ぶ重要な地位を得ます。大学と図書館がポーランド史上重要なヤギェウォ朝にちなむ「ヤギェウォニアン」という名称で呼ばれるようになったのは19世紀以降のことです。1990年代からは、蔵書のデジタル化も積極的に推進されています。

蔵書

ヤギェウォ図書館の蔵書は、その質と多様性においてポーランドで最も有名かつ重要です。中世から近現代に至る貴重な資料を多数収蔵しています。特に著名なのは、ニコラウス・コペルニクスの地動説を記した歴史的著作『天球の回転について』の自筆稿や、ポーランドの歴史家ヤン・ドゥウゴシュによる軍旗に関する写本『バンデリア・プロテノルム』といった中世写本です。また、共産主義政権下のポーランド（1945-1989年）で当局の検閲を逃れて非合法に出版された、いわゆる「地下出版物（drugi obiegやサミズダート）」の膨大なコレクションも世界的に注目されています。さらに、ドイツとの間でその法的地位について論争がある芸術コレクション「ベルリンカ」も所蔵します。

蔵書全体としては約670万点（2005年時点）に及び、モノグラフ、逐次刊行物、初期刊本、写本、楽譜など多様な資料を含みます。楽譜コレクションは特に充実しており、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトやフレデリック・ショパンの自筆譜などが含まれています。楽譜が独立した部署として扱われるようになったのは、1869年、ワルシャワのレオン・ロガルスキからの寄付が契機でした。

組織と建物

図書館は、管理・建物、19世紀・20世紀資料、特別コレクションを担当する3名の副館長の下、14の部門に約280名の職員が勤務する体制で運営されています。主要な建物はクラクフ市のミツキェヴィツァ通り22番地に位置しており、1931年から1939年にかけて建設されました。その後の蔵書増加や機能拡張に対応するため、1961年から1963年にかけて、そして1995年から2001年にかけての二度にわたる増築が行われました。特に後者の拡張では新しい棟が建設されています。また、1993年からは図書館システムのコンピュータ化も進められ、現代的なサービス提供体制が整備されています。

コレクションの盗難

残念な出来事として、1990年代には、図書館から貴重な書籍が盗難される事件が発生しました。ガリレオ・ガリレイ、ヨハネス・ケプラー、ヨハンネス・ベッサリオンといった著名な学者の著作が含まれ、一部はドイツのオークションで回収されましたが、これらの盗難事件の首謀者や詳細は不明のままです。

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