ザカリアス (ローマ教皇)

ザカリアスは、741年から752年までローマ教皇を務めた人物で、カトリック教会では聖人として崇敬されています。彼の記念日は3月22日です。

ザカリアスは、聖ボニファティウスの活動を支援し、聖像破壊運動と奴隷売買に断固として反対しました。その一方で、過熱していた天使信仰を抑制するため、ローマ教会会議において、聖書に名前が記されているミカエル、ガブリエル、ラファエル以外の天使を堕天使としました。これは、民間で広まっていた天使信仰を聖書の正典に基づいて整理しようとした試みでした。

ザカリアスの出身はカラブリアであり、教皇になる前は助祭を務めていました。741年11月28日に先代のグレゴリウス3世が亡くなった後、12月3日に教皇に選出されました。

先代のグレゴリウス3世は、東ローマ帝国やランゴバルド王国との対立を解消できずに多くの問題を抱えていました。ザカリアスはこれらの問題解決に尽力しました。東ローマ帝国では、レオーン3世がグレゴリウス3世と同じ年に亡くなり、息子のコンスタンティノス5世コプロニュモスが後を継いでいました。コンスタンティノス5世は父帝と同じく聖像破壊運動を支持していましたが、ザカリアスは彼と巧みな交渉を行い、和解に成功しました。この背景には、コンスタンティノス5世が義兄弟のアルタヴァスドスとの後継争いを抱えており、有力な味方を必要としていた事情がありました。また、ザカリアスはランゴバルド王国とも和平条約を締結し、安定した関係を築きました。

さらに、ザカリアスはランゴバルド王国を牽制するために、フランク王国の政治にも関与しました。751年、彼はメロヴィング朝のキルデリク3世を廃位し、ピピン3世のカロリング朝創設を支援しました。この時、ザカリアスは「力のない者が王であるよりも、力のある者が王であるべきだ」と述べて、ピピン3世を強く支持したとされています。この出来事により、教皇とフランク王の間には友好関係が築かれました。

ザカリアスは、752年3月15日に帰天（逝去）しました。彼の在位期間は10年3か月12日でした。

ザカリアスは、カトリック教会にとって重要な人物であり、彼の業績は現代にも受け継がれています。彼の外交手腕は、当時のヨーロッパの政治情勢を安定させることに貢献しました。また、天使信仰に対する彼の姿勢は、教会の教義を明確にする上で重要な役割を果たしました。

ザカリアスは、肖像画家や風刺画家の守護聖人としても知られています。

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