ザスバッハの戦い

ザスバッハの戦い：テュレンヌ元帥の戦死

ザスバッハの戦いは、1675年7月27日、仏蘭戦争中にフランス王国と神聖ローマ帝国の間で繰り広げられました。この戦いは、フランス軍を率いるテュレンヌ元帥が戦死したことで歴史に名を刻んでいます。

背景：仏蘭戦争

仏蘭戦争は、ルイ14世の野望と、ネーデルラント継承戦争におけるオランダの裏切りに対する懲罰という二つの要因によって引き起こされました。オランダは当初フランスの同盟国でしたが、ルイ14世の領土拡大政策に危機感を抱き、イングランド、スウェーデンと三国同盟を結び、フランスの拡張を阻止しようとしました。ルイ14世はネーデルラント継承戦争では譲歩したものの、スウェーデンとイングランドを買収して同盟から脱退させ、1672年にオランダに侵攻しました。しかし、オランダは侵攻を食い止め、神聖ローマ帝国などの国々が対仏戦争に参戦する事態となりました。

1674年末から1675年初頭にかけてのテュレンヌの冬季戦役で、アレクサンドル・ド・ブルノンヴィル率いる帝国軍はアルザスから撤退しました。テュレンヌは、少ない兵力で厳寒の中、敵の側面を通過し、1675年1月5日のテュルクハイムの戦いで勝利し、ブルノンヴィルを退却させました。

1675年の戦役

ブルノンヴィルの敗北後、ライモンド・モンテクッコリが帝国軍の指揮を引き継ぎました。モンテクッコリは失地回復のため、ストラスブールからライン川を渡り、アルザスを再占領しようと試みました。1675年春、モンテクッコリはシュヴァルツヴァルトを通って西に進軍し、ライン川流域に到達しました。そこでブルノンヴィルの残兵約8千人を集め、帝国軍は歩兵1万8千、騎兵1万4千にまで増強されました。5月20日、モンテクッコリはヴィルシュテットに本営を設置しました。

モンテクッコリがライン川東岸に接近すると、テュレンヌ率いるフランス軍はライン川西岸で帝国軍を阻止しようとしました。テュレンヌはストラスブールに対し、帝国軍に橋を渡らせないよう要求しましたが、ストラスブール政府は帝国を支持し、5月22日にモンテクッコリに渡河を許可しました。モンテクッコリは軍をケールに移動させるように見せかけ、別の渡河地点を探しました。

5月31日、モンテクッコリはシュパイアーでライン川西岸に渡りましたが、これは陽動作戦であり、帝国軍は6月4日には東岸に戻りました。テュレンヌはこれに惑わされず、6月6日にストラスブールの南にあるオッテンハイムで仮橋を建設し、8日には渡河を完了しました。これにより、両軍はライン川東岸に位置することになりました。テュレンヌはモンテクッコリと同じくヴィルシュテットを本営としました。帝国軍は急いでケールとストラスブールへの道を塞いでいるフランス軍を攻撃しましたが、失敗に終わりました。

モンテクッコリはテュレンヌをケールから引き離すため、再び陽動を試みました。彼はフランス軍の東側、シュヴァルツヴァルトに沿って進軍し、オッフェンブルクを占領しました。さらに軍を南に派遣し、オッテンハイムにあるフランス軍の橋を脅かしました。しかし、テュレンヌは動じず、オッテンハイムの橋を北に移動させました。その後、両軍は1週間にわたり睨み合いを続けましたが、開戦には至りませんでした。やがて、糧秣不足のため、モンテクッコリは北へ撤退し、陣地をストラスブールから10マイルのレンチ川近くに置きました。

ザスバッハの遭遇戦とテュレンヌの死

テュレンヌは帝国軍を追撃しましたが、両軍とも消耗しており、兵力は約2万5千人まで減少していました。7月27日、フランス軍はザスバッハ村で陣地を敷いている帝国軍を発見しました。帝国軍はザスバッハ川の後ろ、山のふもとに陣を構えていました。

午後2時頃、テュレンヌは砲兵の配置を視察中、帝国軍の砲弾に直撃され、肩から側面を貫通する致命傷を負いました。彼は言葉を発することなく倒れ、絶命しました。

戦闘の終結とその後

テュレンヌの死はフランス軍に大きな衝撃を与えましたが、ギー・アルドンセ・ド・デュフォール・ド・ロルジェが指揮を引き継ぎました。フランス軍は砲撃を続けましたが、大規模な戦闘には発展しませんでした。7月29日から30日にかけての夜、フランス軍は撤退を開始しました。モンテクッコリは撤退するフランス軍を追撃しましたが、アルザスへの撤退を阻止することはできませんでした。

テュレンヌの死は、フランスにとって大きな損失であり、ヨーロッパの勢力図にも影響を与えました。ザスバッハの戦いは、名将の死という悲劇とともに、歴史に刻まれることとなりました。

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