シュパイアー

シュパイアー：ライン川畔の歴史都市

ドイツ中南部、ラインラント＝プファルツ州南東部に位置するシュパイアー（Speyer）は、豊かな歴史と文化を誇る人口約5万人の都市です。ライン川の左岸、フランケン地方の西北部に位置し、周辺にはハイデルベルク、マンハイム、カールスルーエといった都市が比較的近接しています。

古代からの歴史

シュパイアーの歴史は古く、ケルト人が集落を形成したNoviomagusにまで遡ります。その後、ゲルマン民族、そしてローマ帝国の支配下に入り、軍の駐屯地として機能しました。ローマ帝国崩壊後にはフランク族が居住し、6世紀には現在の地名の元となったSpiraという表記が見られるようになります。4世紀には司教座が置かれ、宗教の中心地としての役割も担っていました。

中世：神聖ローマ帝国の要衝

11世紀には、神聖ローマ皇帝コンラート2世によってシュパイアー大聖堂の建設が始まりました。ザーリアー朝王家の墓所としても重要な役割を果たしたこの大聖堂は、ロマネスク建築の傑作として知られ、現在もシュパイアーのシンボルとして人々を魅了しています。

10世紀末から、シュパイアー大聖堂の建設と司教座所在地として発展し、頻繁に宮廷会議や帝国会議が開催されるなど、神聖ローマ帝国における重要な政治都市としての地位を確立しました。11世紀にはユダヤ人が居住し、皇帝ハインリヒ4世から特権を認められるなど、多様な文化が交差する都市でもありました。しかし、中世にはユダヤ人迫害も発生し、1435年にはユダヤ人の追放が行われました。

市と司教の対立、都市貴族とツンフト（ギルド）の抗争など、シュパイアーの歴史は決して平穏なものではありませんでした。しかし、これらの出来事を通して、シュパイアー独自の政治構造や経済システムが形成され、13世紀末には神聖ローマ帝国内の自由都市となりました。活発な貿易が展開され、ワインや木材、染料などが交易され、シュパイアーの毛織物は遠くガンやヴィスマルにも輸出されていました。メッスと共に重要な金融の中心地としての役割も担っていました。

宗教改革期には、シュパイアーにおいて帝国議会が開催され（シュパイアー帝国議会）、プロテスタントという名称の起源ともなった出来事が発生しました。

近世以降

プファルツ継承戦争（1688-1689年）では、シュパイアーは壊滅的な被害を受けましたが、その後復興を果たしました。フランス革命からナポレオン戦争期にはフランスの支配下に入り、19世紀前半にはバイエルン王国の支配下に入りました。第二次世界大戦後、ラインラント＝プファルツ州の一部となり現在に至ります。

文化と世界遺産

シュパイアー大聖堂は、ロマネスク建築の代表的な聖堂としてユネスコの世界遺産に登録されています。コンラート2世を始めとする皇帝たちが埋葬されており、歴史的・文化的価値において非常に高い評価を受けています。

また、シュパイアー、ヴォルムス、マインツのユダヤ人コミュニティ遺跡群も2021年に世界遺産に登録されました。シュパイアー市内からはシュパイアーのユダヤ人裁判所の遺跡が登録されています。これらの遺跡は、中世のユダヤ人社会の状況を知る上で貴重な資料となっています。

シュパイアーは、歴史的建造物、世界遺産、行政専門の大学院であるシュパイアー行政大学院など、多くの魅力を持つ都市です。ライン川沿いの美しい景観と、歴史の重みを感じさせる街並みを散策することで、豊かな歴史と文化に触れることができるでしょう。

もう一度検索