ザミーンダーリー制度

ザミーンダーリー制度の概要と影響

ザミーンダーリー制度（Zamindari Settlement）は、18世紀末から19世紀初頭にかけてイギリスの植民地支配下にあったインドにおいて導入された土地所有と税収制度です。この制度は主にベンガル地方で実施され、その影響は北インド全域に及びました。制度の名は、現地の土地所有者や徴税請負人である「ザミーンダール」に由来し、この言葉はペルシャ語で「地主」を意味します。この制度は、1793年にインド総督チャールズ・コーンウォリスによって始まり、地税の徴収を行うために構築されました。

制度の背景と目的

イギリス東インド会社は、地税徴収に関する課題に直面していました。税金の収集を円滑に行うため、現地のザミーンダールに対して土地の権利を確立し、税額を委任しました。最初は入札形式で税額が決められましたが、ザミーンダールたちが多くの場合に破産した結果、土地の権利が不安定化しました。そのため、税の安定的な収入が求められ、コーンウォリスは地税の永代定額制度を導入することにしました。

この制度は「永代ザミーンダーリー制度」と呼ばれ、土地所有を法律で保証し、税額を固定化しました。これにより、税収の確保と土地の開発が同時に進むことを意図していました。しかし、この仕組みは土地に対する権利をザミーンダールに一本化し、農民たちの既存の権利を大きく制約するものでした。

制度の内容

永代ザミーンダーリー制度では、ザミーンダールは土地の所有権を持ち、収入の11分の10を地税として東インド会社に納める義務がありました。この制度により、ザミーンダールたちは封建的特権を失い、近代的な土地所有権が与えられましたが、その一方で農民たちは小作人扱いされ、土地の権利を奪われました。また、土地の競売が行われるようになり、農民たちは失った権利のために苦しむことになりました。

具体的には、農民たちは放牧地や灌漑施設、住宅地に対する使用権を失い、農作物の種類も制約されました。税額は彼らの支払い能力を超えており、ザミーンダールが滞納すると土地は競売にかけられ、都市の富裕層や高利貸しに買い取られてしまいました。このような変化は、地域の社会構造に深刻な影響を与えました。

結果と影響

ザミーンダーリー制度の結果として、土地の約45%が約20年間で競売にかけられることとなり、数多くのザミーンダールが没落しました。制度施行後の状況は、ザミーンダールと農民の間に存在した地位の不均衡をさらに悪化させ、農民は借金を抱え、生活は困窮を極めることとなります。

また、ザミーンダールは農民からの地代を徴収しつつ、地元経済における役割を果たさなくなり、商工業の発展は停滞しました。ザミーンダールと請負人の間に多くの中間層が存在し、地域の経済は不安定さを増しました。これにより、農村においては一層の経済的な閉塞感が生じ、農村社会はより封建的な色彩を帯びることとなります。

1830年代にはこの制度に対する批判が高まり、他の地域では定期的に税額を見直す制度が導入されましたが、それも農民に重い負担を強いるものでした。最終的に、インド独立に伴い土地改革が行われ、ザミーンダーリー制度は大部分廃止されることになりました。

この制度が施行された地域は、他の地域に比べて今日においても公共財の普及が遅く、識字率や政治参加率が低いという研究結果が出ており、その歴史的な影響は今なお見られます。

もう一度検索