ザラ級重巡洋艦

ザラ級重巡洋艦

ザラ級重巡洋艦（Incrociatori pesanti Classe Zara）は、1930年代にイタリア海軍によって建造された2番目の重巡洋艦の艦型です。本級は全4隻が建造され、実戦においても幅広く運用されました。初期には装甲巡洋艦として登場し、その後も優れた設計が評価される一方で、条約型重巡洋艦としての側面も持っていました。

開発背景

ザラ級は、イタリア海軍がフランスのシュフラン級巡洋艦に対抗するために設計されたもので、基本的にはトレント級重巡洋艦の改良版です。トレント級は軽装甲で速力を重視したため、他艦との交戦時に不利な点がありました。そのため、艦の設計を見直し、平甲板型から船首楼型へと進化させ、強固な防御装甲を施すことで、戦闘において優位性を確保することを目指しました。これは、当時としては最高の装甲巡洋艦となりました。

しかし、艦への防御材の増加は、ワシントン海軍軍縮条約の10,000トン制限を超えてしまいました。イタリア海軍は上部構造物の縮小や魚雷発射管の撤去を行いましたが、最終的には条約違反の艦となりました。

艦形の特徴

艦の設計は、船体の軽量化を考え、前級と異なり船体後部を一層低くしています。そして、艦橋は強度を考慮して五脚構造を採用しており、これにより安定性が向上し、艦橋の振動も軽減されました。また、艦橋内部の設計も改良され、指揮機器の配置に十分なスペースを確保しました。

フロントマストには射撃指揮装置と測距儀が装備され、対空火器も強化されていました。しかし、複雑な構造は空気抵抗を増加させ、煙突との接触部に乱流が生じる問題も抱えていました。

武装

この艦級の主砲は、新設計の20.3cm（53口径）砲を装備し、射程31,566mを誇ります。砲塔は連装形式で、砲身の間隔を狭めており、その結果、発射の際の衝撃波が干渉し合う問題がありました。また、高角砲や機銃など、対空武装が充実していましたが、進化する航空機には対抗が難しくなったため、改装が行われました。

1936年から1939年の改装では、旧式の高角砲が撤去され、新たに国産の機関砲が搭載されるなど武装の見直しが行われました。特に、これらの機関砲は航空機に対抗するため、性能が向上していました。

艦歴

ザラ級重巡洋艦は1929年に起工され、1931年には就役しました。歴史の中で、地中海戦域においてイギリス海軍との交戦も経験し、不利な戦局の中で数多くの戦闘に参加しました。

マタパン岬沖海戦では、ポーラが攻撃を受け航行不能に陥り、残る艦も打撃を受けました。特に、レーダーを持たなかったザラ級は夜戦において後れを取る結果となり、多くの艦が沈没しました。最終的に、ゴリツィアがアメリカ軍の空襲を受け、その後もイタリア海軍に残されましたが、1944年には沈没を迎えました。

同型艦と参考情報

ザラ級重巡洋艦は、その艦設計や運用面で壮大な歴史を持つ艦級です。艦に関する詳細は、さまざまな専門書に記載されており、世界の艦船やイタリア海軍の歴史書などが参考になります。同型艦としてはズアラ、フィウメ、ポーラ、ゴリツィアの4隻が挙げられます。さらなる詳細については、海人社の艦船増刊など、信頼できる資料を参照することをお勧めします。

もう一度検索