ザルツブルク大司教

ザルツブルク大司教の歴史と権威

ザルツブルク大司教は、カトリック教会における重要な地位であり、その歴史は深く、多岐にわたります。この地位は単なる宗教的な指導者にとどまらず、中世においては広大な領地を治める領主としての側面も持っていました。

教皇の特別な使節

ザルツブルク大司教は、教皇の特別な使節である「教皇遣外使節」としても知られています。これは、教皇庁の緋色の衣を着用する特権を持つことから明らかです。この衣は通常、枢機卿のみが着用を許されるものであり、ザルツブルク大司教の特別な地位を象徴しています。ザルツブルクの聖堂参事会は、次期大司教を選ぶ際に、教皇が推薦した3人の候補者の中から選ぶという特別な権利を有しています。

中世における領主としての地位

中世において、ザルツブルク大司教はザルツブルク大司教領（1278年 - 1803年）の領主でもありました。神聖ローマ帝国の聖界諸侯が廃止される1803年まで、大司教は神聖ローマ帝国の諸侯（フュルスト）を兼ねており、「大司教侯」という称号を持っていました。この称号は、彼らが単なる宗教指導者ではなく、世俗的な権力も有していたことを示しています。

ローマ教皇との特別な関係

ザルツブルク大司教は、10世紀から「生得の教皇遣外使節」として、緊急時には教皇の代わりに教区内で必要な決定を行う権限を持っていました。さらに、破門宣告を行う権限も与えられていました。1072年以降、1934年のオーストリアとの政教条約締結まで、キームゼー、ゼッカウ、グルク、ラヴァントといった「ザルツブルク大司教領」では、教皇の承認なしに司教を任命・指名することができました。1869年の第1回バチカン公会議では、教皇ピウス9世がザルツブルク大司教マクシミリアン・フォン・タルノーツィを「半教皇」と呼んだという逸話も残っており、その特異な地位が伺えます。

歴代大司教

ザルツブルク大司教の歴史は非常に長く、以下に主な歴代大司教と彼らの任期を記載します。

聖ルーペルト（696年-718年）
聖ヴィルギル（747年-784年）
聖アルノ（785年-821年）
アダルラム（821年-836年）
ロイトラム（836年-859年）
アダルウィン（859年-873年）
アダルベルト1世（873年）
ディートゥマール1世（873年-907年）
ピルグリム1世（907年-923年）
アダルベルト2世（923年-935年）
エギルホルフ（935年-939年）
ヘルホルト（939年-958年）
フリードリヒ1世（958年-991年）
聖ハルトヴィク（991年-1023年）
グンター（1024年-1025年）
ディートゥマール2世（1025年-1041年）
聖エーベルハルト1世（1147年-1164年）
コンラート2世（1164年-1168年）
アダルベルト3世（1168年-1177年、1183年-1200年）
コンラート3世（1177年-1183年）
エーバーハルト2世（1200年-1246年）
ブルクハルト1世（1247年）
フィリップ・フォン・シュポンハイム（1247年-1256年）
ウルリッヒ・フォン・ゼッカウ（1256年-1265年）
ヴラディスラフ・フォン・シュレージエン（1265年-1270年）
フリードリヒ2世（1270年-1284年）
ルドルフ・フォン・ホーエネック（1284年-1290年）
コンラート4世（1291年-1312年）
ヴァイハルト・フォン・ポルハイム（1312年-1315年）
フリードリッヒ3世（1315年-1338年）
ハインリッヒ・ピルンブルンネル（1338年-1343年）
オルドゥルフ・フォン・ヴィーセネック（1343年-1365年）
ピルグリム2世（1365年-1396年）
グレゴール・シェンク・フォン・オスターヴィッツ（1396年-1403年）
エーバーハルト3世（1403年-1427年）
エーバーハルト4世（1427年-1429年）
ヨハン2世（1429年-1441年）
フリードリヒ4世（1441年-1452年）
ジークムント1世（1452年-1461年）
ブルクハルト2世（1461年-1466年）
ベルンハルト・フォン・ローア（1466年-1482年）
ヨハン3世（1482年-1489年）
フリードリヒ5世（1489年-1494年）
ジークムント2世（1494年-1495年）
レオンハルト・フォン・コイチャッハ（1495年-1519年）
マッテウス・ランク・フォン・ヴェレンブルク（1519年-1540年）
エルンスト・フォン・バイエルン（1540年-1554年）
ミヒャエル・フォン・キューンブルク（1554年-1560年）
ヨハン・ヤコブ・フォン・キューン＝ベラースィ（1560年-1586年）
ゲオルク・フォン・キューンブルク（1586年-1587年）
ヴォルフ・ディートリヒ・フォン・ライテナウ（1587年-1612年）
ホーエネムス伯マルクス・ジッティクス（1612年-1619年）
ロドロン伯パリス（1619年-1653年）
トゥーン伯グイドバルト（1654年-1668年）
マックス・ガンドルフ・フォン・キューンブルク（1668年-1687年）
ヨハン・エルンスト・フォン・トゥーン（1687年-1709年）
ハラッハ侯フランツ・アントン（1709年-1727年）
フィルミアン男爵レオポルト・アントン・エロイテリウス（1727年-1744年）
ヤコブ・エルンスト・フォン・リーヒテンシュタイン-カステルコルノ（1744年-1747年）
ディートリヒシュタイン伯アンドレアス・ヤコブ（1747年-1753年）
シュラッテンバッハ伯ジークムント3世（1753年-1771年）
コロレド伯ヒエロニュムス（1772年-1812年）
ジークムント・クリストフ・フォン・ツァイル・ウント・トゥラウハブルク（1812年-1814年）
レオポルト・マクシミリアン・フォン・フィルミアン（1816年-1822年）
アウグスト・グルーベル（1823年-1835年）
フリードリヒ・ヨハネス・フォン・シュヴァルツェンベルク（1835年-1849年）
マクシミリアン・ヨーゼフ・フォン・タルノーツィ（1851年-1876年）
フランツ・アルベルト・エーダー（1876年-1890年）
ヨハネス・ハラー（1890年-1900年）
ヨハネス・バプティスト・カッチャタラー（1900年-1914年）
アンドレアス・ローラッハー（1943年-1969年）
エドゥアルト・マッハイナー（1969年-1972年）
カール・ベルク（1973年-1988年）
ゲオルク・エーダー（1989年-2002年）
アロイス・コートガッセル（2003年-2013年）
フランツ・ラクナー（2014年-現在）


このリストは、ザルツブルク大司教の歴史を網羅的に示すものであり、それぞれの時代における大司教たちの役割と影響を理解する上で重要な資料となります。

外部リンク

* ザルツブルク大司教たち(日本語版)

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