ザ・おやじファイト

ザ・おやじファイトとは

「ザ・おやじファイト」（THE OYAJI FIGHT）は、特定の年齢層に特化したボクシング形式のスパーリング大会です。この大会は、主に30歳以上の男性がリングに上がり、日頃の練習の成果を試す場として設立されました。単なるスパーリング会に留まらず、プロボクシングに倣ったタイトルマッチ制度を導入し、チャンピオンベルトをかけて真剣勝負が行われる点が大きな特徴です。

また、この大会の姉妹イベントとして、「なでしこファイト」が開催されています。こちらは18歳以上の女性を対象とした女子ボクシングマッチであり、ザ・おやじファイトの興行内で数試合が組まれる形で実施されています。

大会の特色と参加資格

ザ・おやじファイトへの参加資格は、30歳以上の男性で、プロ・アマ問わずジムや道場、スポーツクラブなどに所属し、日常的にボクシングのトレーニングを積んでいることです。試合は2分3ラウンド形式で行われます。年齢の上限は事務局の判断により体力や健康状態が良好と認められれば特に設けられていません。なでしこファイトは、当初20歳以上でしたが、現在は18歳以上の女性が対象となっています。

参加選手は、年齢や経験に応じて設定されたカテゴリーに分けられます。ザ・おやじファイトでは、30歳以上40歳未満の「R30」、40歳以上50歳未満の「R40」、50歳以上の「R50」といった年齢別の区分に加え、プロ経験者やトップアマチュア、他の格闘技上級経験者向けの「OFB」や、年齢カテゴリーでマッチメイクが難しい場合の「RF」カテゴリーがあります。なでしこファイトにも同様に「R20」（18歳以上30歳未満）、「R30」（30歳以上40歳未満）、「R40」（40歳以上）のカテゴリーが存在します。

さらに、両大会とも体重別の階級制を採用しており、自身の体格に合ったカテゴリーで競技を行います。ザ・おやじファイトはフライ級からヘビー級まで13階級、なでしこファイトはアトム級からフェザー級まで5階級が設定されています。

試合ルール

試合は選手の安全を最優先に考慮して行われます。参加者はオープンフェイスタイプのヘッドギアを必ず着用します。グローブは事務局が用意したものが使用され、階級によって重さが異なります。フライ級からミドル級までは14オンス、ライトヘビー級以上は16オンスのグローブが用いられます。

リングは内側が5m以上7m31cm以内のサイズのものを使用し、試合は1ラウンド2分の3ラウンド制で行われます。勝敗はレフェリー1名とジャッジ3名による判定で決定されます。採点はプロボクシングと同様の10ポイントマストシステムを採用しており、各ラウンドごとに優劣をつけ、総合ポイントで勝敗が決まります。王座決定戦で引き分けとなった場合は、ジャッジが優勢だった選手を判断して勝敗を決定します。

ダウンに関しては、立っている状態でのスタンディングダウンやクリーンヒットによるダウンが認められます。同じラウンド中に2回のダウンがあった場合はツーノックダウンとなり試合がストップされますが、1試合を通じて3回のダウンを喫した場合はKO負けとなります。選手の安全が危ぶまれる状況では、イエローフラッグ（一時中断）やレッドフラッグ（試合中止）が投げ込まれる措置も講じられています。

設立と歩み

ザ・おやじファイトは、B:TIGHT事務局の主催により、元ワタナベボクシングジムマネージャーであった瀬端幸男氏（後にDANGAN AOKIジム会長）を大会プロデューサーに迎えて誕生しました。設立当初から日本ボクシング連盟（JABF）との関係に課題がありましたが、様々な困難を乗り越え、2006年11月5日に新宿FACEで第1回大会が開催されました。この初回大会はNHKや日本テレビのニュースでも取り上げられ、注目を集めました。当初の参加対象年齢は35歳以上と設定されていました。

2007年には王座制度が確立され、初代王座決定トーナメントが開催されました。この年には、元世界チャンピオンの小林光二氏をはじめとする往年の名プロボクサーたちも参戦し、大会の注目度は一層高まりました。同年には大会事務局がB:TIGHTから独立し、参加対象年齢も35歳から33歳以上に引き下げられました。

大会開始当初は、日本プロボクシング協会（JPBA）加盟ジムからの参加や、日本ボクシングコミッション（JBC）のライセンスを持つオーナーやトレーナーなどが関与する例も見られました。しかし、JBCの規則では、ライセンス保持者がJBC管轄外の試合に参加することは原則禁じられている背景もあり、2011年頃にはJBCからの強い働きかけがありました。これにより、JBCのライセンスを持つ選手やセコンド、関係者は大会への関与を停止せざるを得なくなり、同様にJPBA加盟ジムも公式な形での参加が難しくなりました（ただし、JBCライセンスを持たない個人がJPBA加盟ジムで練習し、個人として参加することは可能でした）。

歴史の中で、2008年には初の地方大会が開催され、チャンピオンカーニバルも実施されるなど、全国的な広がりを見せ始めました。2009年4月26日の大会では、女子プロボクシングの本格化に呼応するかのように、姉妹イベントである「なでしこファイト」がスタートしました。同年9月13日のなでしこファイト第3回大会では、JBC女子よりも早くチャンピオンベルトが作られたことも特筆されます。

近年、大会は主に扇橋ホールで開催されることが多いですが、札幌、静岡、愛知、石川、大阪、兵庫、福岡、佐賀、長崎、熊本など、地方での開催も積極的に行われています。2014年8月3日には、記念すべき第100回大会が後楽園ホールで開催され、全17試合が行われました。また、ザ・おやじファイト専門のボクシングジムも登場するなど、大会は独自のコミュニティを形成しています。2009年6月17日には、写真家の熊谷美由希氏による写真集「おやじファイトルーザー・勝っても負けても明日からまた仕事」が発売され、参加選手の熱戦と彼らの日常が情感豊かに写し出されました。

参戦経験のある選手と関連イベント

ザ・おやじファイトには、過去にJABFやJBCで実績を残した著名なボクサーがエキシビション的な要素も含めて参戦した例が複数あります。小林光二氏、カズ有沢氏、高橋ナオト氏、リック吉村氏、寺地永氏、佐藤昇氏（ジャーナリストとしても知られる）らがリングに上がっています。また、なでしこファイトからJBCのプロライセンスを取得し、プロのリングに進出した選手もおり、関敦子氏、高野人母美氏、青木沙耶香氏などがその例として挙げられます。

ザ・おやじファイト事務局は、他の年代を対象としたイベントも手掛けています。例えば、「B-UPスパーリングマッチ」は17歳から35歳までの男性を対象としたボクシングのスパーリングイベントであり、「ナイスミドル」は40歳以上の男性によるキックボクシング大会です。これらのイベントも、アマチュアや経験者の競技の場として、幅広い年齢層に格闘技に親しむ機会を提供しています。

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