寺地永

寺地 永（てらじ ひさし）氏は、1964年4月5日生まれ、京都府城陽市出身の日本の元プロボクサー、政治家、そしてBMBスポーツジムの会長です。立命館大学経営学部を卒業しており、身長189cmの恵まれた体格を持っていました。特に、世界ボクシング評議会（WBC）世界ライトフライ級で二団体統一王者となった寺地拳四朗選手の父としても広く知られています。

幼少期に父を、大学時代には母を亡くすという辛い経験を乗り越え、立命館大学経営学部へ進学しました。大学ではボクシング部に入部し、アマチュア選手として活動。重量級ながらも俊敏な動きと、アマチュアで培われた巧みなテクニックを駆使するスタイルで頭角を現し、49勝（25KO）3敗という優れた戦績を残しました。大学卒業後、一度は商社に勤務しますが、ボクシングへの情熱を捨てきれず、プロの道に進むことを決意します。

1989年7月25日、スーパーウェルター級でプロデビュー戦を飾り、初回KO勝利という鮮烈なスタートを切りました。その後、ミドル級へと階級を上げ、プロわずか4戦目で日本ミドル級王者の西條岳人選手に挑戦しますが、結果は引き分けで王座獲得はなりませんでした。翌年再び西條選手に挑むも、再び引き分けに終わります。そして1992年2月17日には、西條選手からタイトルを奪取した竹原慎二選手と対戦。試合前の緊迫した睨み合いも話題となりましたが、結果は2ラウンドKO負け。これが寺地氏にとって、プロキャリアにおける唯一の敗戦となりました。

しかし、寺地氏は諦めませんでした。1993年8月16日、竹原選手が返上した王座を争う決定戦でビニー・マーチン選手と対戦。10ラウンド判定の末、ついに念願であった日本ミドル級王座を獲得します。このタイトルを三度防衛した後、1995年5月18日に王座を返上しました。

階級をライトヘビー級に上げ、1996年4月27日、空位となっていたOPBF東洋太平洋ライトヘビー級王座決定戦でガース・カッション選手と対戦。12ラウンド判定で勝利し、二つ目のタイトル獲得を果たしました。この東洋太平洋王座も四度防衛。中でも西澤ヨシノリ選手との日本人対決は、12ラウンドを戦い抜く熱戦となりました。しかし、当時の日本ボクシング界では重量級選手の層が薄く、十分なスパーリング相手を見つけることに苦労し、単身での海外遠征を行うなど、試合準備には困難が伴いました。また、所属ジムの経済状況も厳しく、試合が組まれない状況が続きます。2000年9月の防衛戦を最後に、1年間リングから遠ざかった結果、東洋太平洋ボクシング連盟からタイトル剥奪を通告されるという不運に見舞われました。

2001年10月17日、東洋太平洋王座を返上し、現役からの引退を表明します。当時の規定では37歳が定年とされていましたが、現役王者は例外という新たな規定が設けられており、寺地氏はその規定適用第一号として、現役王者のままリングを去るという異例の形でキャリアに幕を下ろしました。

引退後、寺地氏は実業家として活動を開始。有限会社システムサポート（後にB.M.Bクリーンサービスに改称）を経営しました。そして、現役時代からの後援者の強い勧めもあり、政界への転身を図ります。2003年4月27日に行われた城陽市議会議員選挙に民主党公認で立候補し、当選。市議会議員として市政に携わりました。2007年の選挙でも再選を果たしますが、2011年の選挙では落選しています。

政治活動と並行して、2005年3月13日には京都府宇治市にB.M.Bスポーツジムを設立し、会長に就任。後進の育成に力を注ぐようになります。また、2006年にはアマチュア経験者を対象としたイベント「ザ・おやじファイト」に出場し勝利。その際、海外での現役復帰への意欲を示すなど、ボクシングへの情熱は衰えることがありませんでした。

そして、寺地氏のボクシングの遺伝子は息子である寺地拳四朗選手に受け継がれます。拳四朗選手は父とは逆の軽量級でアマチュアで活躍後、B.M.Bスポーツジムからプロデビュー。父子二代での日本王座獲得という快挙を成し遂げただけでなく、永氏が果たせなかった世界王座にも複数階級で輝き、偉大な親子王者としてボクシング史に名を刻みました。選手としての苦労、政治家としての経験、そしてジム会長としての活動を通じて、寺地永氏はボクシング界の内外で多角的なキャリアを築き上げています。

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