ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー

ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー

1981年に公開された『ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー』（原題: Thief）は、マイケル・マンの監督デビュー作として知られています。この映画は、フランク・ホヒマーによる小説を原作としており、アメリカ映画界における一つの金字塔となりました。

ストーリーの概要

物語は、シカゴで中古自動車販売を営むフランク（演：ジェームズ・カーン）を中心に展開します。彼はプロの金庫破りでもあり、裏社会での仕事を行っています。刑務所にいる大泥棒オークラ（演：ウィリー・ネルソン）を父のように慕い、彼の教えを忠実に守りながら仲間と共に仕事をこなしています。しかし、次第にその生活に疲れを感じたフランクは、ウェイトレスのジェシー（演：チューズディ・ウェルド）と新しい人生を歩もうと決意します。

だが、犯罪組織のボス、レオ（演：ロバート・プロスキー）がフランクに目をつけ、彼の腕前を買って仕事を依頼してくるという展開が待ち受けています。フランクは犯罪組織との関係をどのように整理し、彼自身の人生をどう変えていくのでしょうか。物語は、緊張感あふれるシーンと人間関係の深まりを描きながら、彼の葛藤を見事に表現しています。

映画の背景

マイケル・マンは本作で監督、製作総指揮、脚本を手がけており、興行的な成功を収めたとは言い難いながらも、後の作品に影響を与える重要な要素が多く見られます。特に、夜間の撮影技術やリアルな強盗や銃撃シーンに関する描写は、その後のマイケル・マン作品の基本形となっています。

本作では、デニス・ファリーナやチャック・アダムソンといった実際の経験を持つ技術顧問が起用されており、リアリティを追求した背景が感じられます。例えば、油圧ドリルやバーナーを使った金庫の破壊シーンは、実際に元宝石泥棒のサントゥッチが使用していた手法を忠実に再現しています。

この作品は、ロバート・プロスキーやデニス・ファリーナの他、ウィリアム・ピーターセンやジム・ベルーシも初出演を果たしており、彼らのキャリアを築くきっかけとなりました。特に、デニス・ファリーナは現役の警察官であり、マイケル・マンが撮影のためにシカゴを訪れた際、彼の同僚であったチャック・アダムソンが紹介したことがきっかけで映画界に入ることになります。

銃の描写

本作では、迫力あるガンアクションが特徴的で、ウイーバースタンスによる戦闘スタイルが特に注目されます。使用されるコルト・ガバメントはナショナルマッチの改造モデルであり、そのリアルさが際立っています。ジェームズ・カーンは射撃訓練を行い、その成果を見せることになり、以後の作品でも彼の銃技術が活かされました。

さらに、劇中に登場する銃器には、コルト M1911A1やS&W M19、HK91などがあり、リアリティだけでなく、銃器に対する知識も深められています。

結論

『ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー』は、単なる犯罪映画にとどまらず、主人公の内面の葛藤や変化、リアリティを追求した作品として評価され続けています。マイケル・マンがその後のキャリアで発揮するスタイルの基礎がここにあり、映画史において重要な位置を占めています。

もう一度検索