S&W M19

S&W M19：コンバットマグナムの誕生と進化

S&W M19は、スミス&ウェッソン社が1955年に発売した回転式拳銃です。当初は「コンバットマグナム」という名で知られ、1957年のモデルナンバー制度導入後もこの通称が広く用いられました。本銃は、.357マグナム弾を使用できる中型リボルバーとして、その後のリボルバーの歴史に大きな影響を与えました。また、本項では、M19のステンレス鋼モデルであるS&W M66についても解説します。

開発の背景

1930年代に登場した強力な.357マグナム弾は、当初は大型の.44スペシャル弾用拳銃を小口径化して使用されていました。スミス&ウェッソン社も、.357マグナム弾に合わせて大型のNフレームベースのM27を開発しましたが、これらは法執行官が日常的に携行するには大きすぎました。そこで、コンバットシューティングの第一人者であり、アメリカ国境警備隊で法執行官を務めていたビル・ジョーダン大佐の意見を取り入れ、より小型のKフレーム・リボルバーをベースに.357マグナム弾を使用できるように強化したのがM19です。

設計の特徴

M19は、Kフレームをベースとし、ヨーク部分をわずかに拡張したKターゲットフレームを用いて設計されています。4本のビスで固定される4スクリュータイプで、6連発のシリンダーを備えています。シリンダー長は42mmで、銃身長は当初4インチのみでしたが、後に2.5インチと6インチが追加されました。リアサイトは調整可能で、フロントサイトは抜き撃ちに優れたランプタイプを採用。グリップは木製のスクウェアバット型で、表面処理はブルーフィニッシュとニッケルフィニッシュが選択できました。

1970年には、ステンレス鋼製のM66が発表されました。M66は、M19の耐久性を向上させるとともに、トリガーメカニズムも改良され、よりスムーズな操作感を実現しました。

ただし、小型のKフレームで強力な.357マグナム弾を頻繁に使用すると、銃と射手に負担が大きいという問題点も指摘されました。これは、軽量なKフレームの反動が強いこと、そしてシリンダーがフレームのサイズに対して大型で、エジェクターロッドの位置が高くなるため、銃身の下部を削ってスペースを確保する必要があったことが原因です。その後、より頑丈なLフレームが開発され、M586やM686などのディスティングイッシュド・コンバットマグナムが誕生しました。

M19は1999年に、M66は2004年に生産終了となりましたが、M66は2014年にブラックラバーグリップを標準装備した新仕様で再生産されています。

運用と活躍

M19は、アメリカの警察機関で広く採用されました。FBI捜査官からも高い評価を受け、後にM13（S&W M10の.357マグナム弾仕様）が正式採用されるに至りました。

1972年のミュンヘンオリンピック事件以降、ヨーロッパの法執行機関では対テロ作戦を担当する特殊部隊が編成されました。創設間もないこれらの部隊は、確実な動作を評価してM19を含む回転式拳銃を多用していました。1977年のルフトハンザ航空181便ハイジャック事件では、突入したGSG-9隊員がH&K P9S自動拳銃やH&K MP5短機関銃を装備していましたが、隊長のウェグナー大佐はM19を、他の隊員もM66を携行していました。

日本では、海上保安庁の特殊警備隊（SST）の前身である関西国際空港海上警備隊が、4インチモデルのM19を使用していました。また、1996年のダンブレーン小学校乱射事件では、犯人がブローニング・ハイパワーとともにM19を使用しました。

登場作品

M19は、数多くの映画やドラマ、ゲームに登場し、その堅牢さと信頼性から高い人気を誇っています。

まとめ

S&W M19は、その高い実用性と信頼性から、法執行機関や特殊部隊に広く採用され、現在も多くのファンに愛されるリボルバーです。ステンレスモデルであるM66とともに、その歴史と特徴を語る上で欠かせない存在です。M19は、リボルバーの歴史において、大きな足跡を残した名銃といえるでしょう。

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