ザ・クルセイダーズ

アメリカ合衆国南部のテキサス州を拠点に活動を開始した音楽グループ、ザ・クルセイダーズは、その前身であるジャズ・クルセイダーズ時代から、ジャンルを越えた独自のサウンドを追求し続けたことで知られています。当初はジャズを基盤としていましたが、時代と共にクロスオーバー、そしてフュージョンへとその音楽性を変化させ、幅広いリスナー層を獲得していきました。

彼らのサウンドを特徴づけたのは、ウェイン・ヘンダーソンのトロンボーンとウィルトン・フェルダーのテナーサックスという二つの管楽器、そしてジョー・サンプルの奏でるフェンダー・ローズ・エレクトリック・ピアノでした。これらの核となるパートが絡み合い、ドラマーのスティックス・フーパーによる強固なリズムに支えられることで、彼ら固有のグルーヴが生まれていました。さらに、ラリー・カールトンをはじめとするゲストや準メンバーとして参加したギタリストやベーシストも、そのサウンドに彩りを加えていきました。

グループの起源は、テキサスでジョー・サンプルがヒューバート・ロウズらと共に結成したモダン・ジャズ・セクステットに遡ります。ロウズの脱退後、ジョー・サンプル（キーボード）、ウェイン・ヘンダーソン（トロンボーン）、ウィルトン・フェルダー（テナーサックス、ベース）、スティックス・フーパー（ドラム）の四人が中心となり、1961年にジャズ・クルセイダーズとしてアルバム『フリーダム・サウンド』でデビューを飾りました。このジャズ・クルセイダーズ時代の作品群は、その後のフュージョン期とは異なる純粋なジャズサウンドが展開されており、現在でも根強いファンを持っています。

1971年にはグループ名を「ザ・クルセイダーズ」と改称し、アルバム『パス・ザ・プレイト』をリリース。続く『クルセイダーズ1』、『セカンド・クルセイド』、『アンサング・ヒーローズ』といった作品で、ジャズやクロスオーバーの熱心なファンの間で評価を固めていきました。しかし、ポピュラー音楽のファン層に広く知られるようになったのは、1970年代半ば以降、フュージョンが大きなムーヴメントとなった時代でした。特にアルバム『スクラッチ』や『サザン・コンフォート』は、多くのリスナーに彼らの名を印象づけました。

音楽活動と並行して、1972年にはクルセイダーズ・プロダクションを設立。後にレコードレーベル、クルセイダーズ・レコードも発足させましたが、こちらは短期間で活動を終えています。

順調にアルバムを発表し続ける中、1976年には結成時からのメンバーであるウェイン・ヘンダーソンと、1974年に正式加入したばかりのラリー・カールトンが脱退するという大きな変化がありました。しかし、皮肉にもその後の時期にグループの知名度はさらに向上しました。1979年にランディ・クロフォードをゲストボーカルに迎えた「ストリート・ライフ」や、1980年のビル・ウィザースをフィーチャーした「ソウル・シャドウズ」といった楽曲は、ヒットチャートを賑わせました。

1983年にはスティックス・フーパーも脱退し、グループは核となるメンバーが次々と離れることになりました。その後はウィルトン・フェルダーとジョー・サンプルを中心とし、その都度異なるゲストミュージシャンを迎える形で活動を継続しました。1991年のアルバム『ヒーリング・ザ・ウーンズ』を最後に、ザ・クルセイダーズとしての活動は事実上停止状態となりました。

しかし、1990年代には活動が再開される動きが見られました。1992年にはウェイン・ヘンダーソンとウィルトン・フェルダーが「ネクスト・クルセイド」名義で、1995年には再び「ジャズ・クルセイダーズ」名義でアルバムを発表。そして2002年には、ウィルトン・フェルダー、ジョー・サンプル、スティックス・フーパーという主要メンバーが再集結し、ザ・クルセイダーズ名義でのアルバム『ルーラル・リニューアル』をリリースし、往年のファンを喜ばせました。

残念ながら、結成時の四人のオリジナルメンバーは、時を経て次々とこの世を去りました。2014年にはジョー・サンプルとウェイン・ヘンダーソンが、翌2015年にはウィルトン・フェルダーが他界。2022年現在、スティックス・フーパーが唯一、結成当時からの存命メンバーとなっています。ザ・クルセイダーズは、ジャズからフュージョンへと変遷しながら、独自の音楽世界を切り開いた伝説的なグループとして、今もなお多くの音楽ファンに記憶されています。

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