ザ・シークレットマン

ザ・シークレットマン：ウォーターゲート事件を揺るがした男の物語

『ザ・シークレットマン』（原題: Mark Felt: The Man Who Brought Down the White House）は、2017年に公開されたアメリカ合衆国の伝記政治映画です。ウォーターゲート事件で匿名の情報提供者「ディープスロート」として知られる、マーク・フェルト元FBI副長官の生涯を描いた作品であり、リーアム・ニーソンがフェルトを熱演しています。監督はピーター・ランデズマン、製作はリドリー・スコットが務めています。

FBI副長官の葛藤と正義

映画は、J・エドガー・フーヴァーFBI長官の死後、ニクソン大統領が自身の意向に沿うパトリック・グレイをFBI長官代理に任命したことから始まります。マーク・フェルトは、長年FBIに貢献し、長官の座を期待していただけに、この任命に強い不満を抱きます。

ウォーターゲート事件の捜査が始まると、フェルトは事件の真相究明に尽力しますが、グレイはホワイトハウスからの圧力を受け、捜査の妨害や捜査範囲の制限をフェルトに指示します。FBIの独立性を懸念したフェルトは、グレイの指示に従うことを拒否し、ワシントン・ポストやタイム誌に情報をリークすることで、事件の隠蔽工作に対抗します。

隠された陰謀と家族の苦悩

フェルトは、ニクソン大統領と政権による隠された陰謀の存在を確信し、その全貌解明に執念を燃やします。彼は、ワシントン・ポストのボブ・ウッドワードに匿名で情報を提供し、ウッドワードはそれを「ディープスロート」というコードネームで記事にしています。

一方、フェルトは個人的な苦悩も抱えていました。長官に就任できなかったこと、そして娘の失踪による家族の危機が、彼の精神的な負担となっていたのです。彼は娘の行方を捜索しながら、事件の真相究明に奔走します。

真実の追求と高まる圧力

フェルトのリークによって、ウォーターゲート事件の真相が徐々に明らかになり、ニクソン政権は大きな打撃を受けます。大統領と政権側は、フェルトへの報復を開始し、FBI内部の人事異動など様々な圧力をかけます。しかし、フェルトは正義感と信念を貫き、国家への忠誠心とマスコミへのリークという葛藤を抱えながらも、真実を明らかにしようとします。

フェルトは、タイム誌のサンディ・スミスにも情報をリークし、ニクソン政権の隠蔽工作を暴きます。これによってグレイ、司法長官、大統領顧問、首席補佐官などが失脚し、最終的にはニクソン大統領も辞任に追い込まれます。

贖罪と静かな決意

数年後、フェルトはFBIを退職し、失踪していた娘とも再会します。大陪審審査で「ディープスロート」であったかと問われた彼は、複雑な思いを抱えながらも、その事実を認めようとします。映画は、フェルトの正義感、そして国家と個人の葛藤、そして家族との絆を描いた、重厚な人間ドラマとなっています。

キャスト

マーク・フェルト：リーアム・ニーソン
オードリー・フェルト（妻）：ダイアン・レイン
L・パトリック・グレイ（FBI長官代理）：マーティン・チョーカシュ
その他、多くの実力派俳優が出演しています。

この映画は、ウォーターゲート事件という歴史的事件の裏側で奮闘した一人の男の物語であり、正義と信念、そして葛藤を描いた、見応えのある作品です。単なる政治サスペンスにとどまらず、人間の弱さと強さを同時に描き出している点も高く評価できます。

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