ザ・ジゴロ

ジャズ界を代表するトランペット奏者、リー・モーガンが1968年に世に送り出したスタジオ・アルバム『ザ・ジゴロ』は、ハード・バップ期における重要な作品の一つです。本作は1965年に録音が行われました。

このアルバムの制作は、1965年の夏に二度に分けて行われたセッションに基づいています。最初の録音セッションは6月25日に行われましたが、この時に録音された楽曲のほとんどがお蔵入りとなり、アルバムに収録されたのはウェイン・ショーターが作曲した「トラップト」一曲のみでした。残りのトラックは、その数日後の7月1日に改めて録音されました。

レコーディングに参加したミュージシャンは、リー・モーガン（トランペット）を中心に、ウェイン・ショーター（テナー・サクソフォーン）、ハロルド・メイバーン（ピアノ）、ボブ・クランショウ（ベース）、そしてビリー・ヒギンス（ドラムス）という、当時のシーンを牽引する素晴らしい顔ぶれです。彼らの緊密かつ創造的なアンサンブルが、このアルバム全体のサウンドを決定づけています。

収録曲は以下の通りです。

イエス・アイ・キャン、ノー・ユー・キャント - "Yes I Can, No You Can't" (リー・モーガン作曲) - 7:26
トラップト - "Trapped" (ウェイン・ショーター作曲) - 5:59
スピード・ボール - "Speedball" (リー・モーガン作曲) - 5:32
ザ・ジゴロ - "The Gigolo" (リー・モーガン作曲) - 11:07
* ユー・ゴー・トゥ・マイ・ヘッド - "You Go to My Head" (John Frederick Coots, Haven Gillespie作曲) - 7:22

アルバムのオープニングを飾る「イエス・アイ・キャン、ノー・ユー・キャント」は、リー・モーガンが1963年に発表し大ヒットした代表曲「ザ・サイドワインダー」の流れを汲む、印象的なファンキーな楽曲です。また、タイトルチューンである「ザ・ジゴロ」は、演奏時間の長い壮大な楽曲であり、各メンバーのソロが存分にフィーチャーされています。スタンダードナンバーである「ユー・ゴー・トゥ・マイ・ヘッド」も、この強力なメンバーによって情感豊かに演奏されています。

本作は発表以来、批評家から高い評価を受けています。著名な音楽評論サイト「オールミュージック」において、評論家のスコット・ヤナウは、このアルバムに5点満点中4.5点の高評価を与えています。彼はレビューの中で、「ここには弱い曲がなく、リーダーを筆頭にテナー奏者のウェイン・ショーター、ピアニストのハロルド・メイバーン、ベーシストのボブ・クランショウ、ドラマーのビリー・ヒギンスのいずれも、辛辣な批判を受けることはあり得ない」と述べ、参加ミュージシャン全員のパフォーマンスを絶賛しています。

後年のリリースとしては、2006年にリマスターされたCDには、アルバムのタイトル曲「ザ・ジゴロ」の別テイクがボーナス・トラックとして追加収録されており、オリジナルのセッションにおける異なる演奏を聴くことができます。

『ザ・ジゴロ』は、リー・モーガンの瑞々しいトランペットと、ウェイン・ショーターをはじめとする共演者たちの卓越した技量が光る、今日なお多くのジャズファンに愛され続ける名盤です。

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