ザ・スクエア 思いやりの聖域

映画『ザ・スクエア 思いやりの聖域』

『ザ・スクエア 思いやりの聖域』は、2017年に公開されたスウェーデンの風刺ドラマ映画で、監督兼脚本はリューベン・オストルンドが務めました。この作品では、現代美術館のキュレーターであるクリスティアンの不条理な物語を通じて、社会の中での道徳的選択や人間の思いやりを鋭く描写しています。映画は第70回カンヌ国際映画祭で上映され、パルム・ドールを受賞したことでも話題となりました。

プロット概要

物語は、ストックホルムの美術館に勤務するクリスティアンが主人公です。彼は、離婚後に二人の娘を育てながら、他者の信頼や思いやりを象徴するスペース「ザ・スクエア」を設けます。しかし、平穏な日常が一変する事件が彼を襲います。ある朝、クリスティアンは通勤中にスマートフォンと財布を盗まれてしまいます。この盗難事件をきっかけに、彼は経済的に困窮している周辺住民に対する見方が揺らぎ、自身の道徳的ジレンマに直面します。

クリスティアンは、盗品を取り戻すために低所得者が暮らすアパートのドアに脅迫文を投函しますが、その後ひょんなことから貧しい少年と出会います。少年もまた、クリスティアンからの脅迫に巻き込まれ、彼の心に良心の呵責が芽生えます。彼は、この少年に対する理解を深めようとしますが、思いもよらぬ事態が次々と起こります。

美術館で行われたパーティーが大失敗に終わったことをきっかけに、クリスティアンは少年に対して冷たく接してしまったことへの後悔に悩むようになります。また、若いアーティストによる社会問題をテーマにした企画展も波紋を呼び、道徳と芸術の狭間で苦しむ姿が描かれます。

最終的に、クリスティアンは「ザ・スクエア」の意味を再考し、彼が大切にしてきた価値観への思索を深めていきます。美術館の責任者としての立場や、他者との関係が彼の人生に影響を及ぼす様子が物語の中で緊迫感を持って描写されています。

キャストについて

クリスティアン役にはデンマーク出身のクレス・バングが起用され、彼の複雑な感情表現が作品の厚みを増しています。また、エリザベス・モスが演じる記者アンや、ドミニク・ウェストが扮する著名なアーティスト・ジュリアンなど、多様なキャラクターがストーリーに深みを与えています。

制作背景

映画のアイデアは、オストルンドが訪れた美術館での体験から生まれました。監督は、「ザ・スクエア」が信頼と思いやりの信号であることを強調し、製作過程では多くのアートギャラリーを訪れてリサーチを行ったと述べています。この作品は、彼自身が抱える社会問題へのアプローチでもあり、どんな状況下でも人間的な感情がいかに試されるのかを鋭く掘り下げています。

公開と評判

2017年のカンヌ映画祭でのプレミア上映は高い評価を受け、その後各国で上映されました。一般公開後も、作品に対する賛否が寄せられ、特に社会問題に対する視点を持つ観客から多くの支持を得ることとなりました。『ザ・スクエア 思いやりの聖域』は、風刺とドラマが交錯する作品として、今なお多くの人々に影響を与える存在です。

この映画は、人々がいかにして道徳的選択を行なうのか、そして社会的な現実をどのように受け入れるかを問いかける深いメッセージを持っています。

もう一度検索