ザ・ストレンジラヴズ

ザ・ストレンジラヴズ：虚構のオーストラリアン・ビートから生まれたヒット

ザ・ストレンジラヴズは、1964年にニューヨークで結成されたアメリカのバンドです。ボブ・フェルドマン、ジェリー・ゴールドスタイン、リチャード・ゴッテラーという、作詞・作曲・プロデュースを手がける3人組によって生み出されました。彼らの特徴は、オーストラリア出身という虚偽のアイデンティティを前面に押し出した戦略にありました。

結成の背景と戦略

ストレンジラヴズ結成以前、フェルドマンとゴールドスタインはソングライターとして活動し、デュオとしてもシングルをリリースしていました。その後ゴッテラーを加え、FGGプロダクションを設立。エンジェルズのヒット曲を手がけるなど、音楽業界で実績を重ねていました。しかし、ブリティッシュ・インヴェイジョンによってガールズ・グループ・サウンドの人気が衰退すると、FGGは新たな戦略として、外国人ビート・グループを自ら作り出すことを決意します。

そこで彼らは、オーストラリア出身という設定を選択。プレスリリースや広報資料で、ジャイルズ、マイルズ、ナイルズ・ストレンジという3兄弟であると発表しました。羊の交配で財を成し、音楽活動を始めたという架空のバックストーリーを作り上げ、シマウマ柄のベストを着用し、アフリカの太鼓を持つという奇抜なイメージを打ち出しました。この戦略は世間の耳目を集めるには至りませんでしたが、ストレンジラヴズのシングルはアメリカを中心にヒットを記録しました。

ヒット曲とライブ活動

1965年、セカンド・シングル「I Want Candy」がヒット。これにより、ストレンジラヴズはライブ活動を行うことになります。しかし、ライブ経験の少ない彼らは、セッション・ミュージシャンからなるロード・グループを結成し、ライブをこなしました。その後もメンバーチェンジを繰り返しながら、1968年まで活動を続けました。スタジオ音源は、FGGの3人が演奏し、必要に応じてセッション・ミュージシャンが参加していました。

その他の活動と影響

ストレンジラヴズは、1965年にデビューアルバム『I Want Candy』をリリース。その後もシングルをリリースし続けましたが、本国オーストラリアではチャートの最下位に留まりました。しかし、ジョニー・ヤング＆コンパニーによって「Cara-Lin」がカバーされ、オーストラリアでヒットを記録しました。

FGGの3人は、ザ・ビーチ・ナッツやザ・シープという名義でも活動し、チャートインを果たしました。また、フェルドマンとゴールドスタインは、Rome & Paris、The Rock & Roll Dubble Bubble Trading Card Co.としても活動。ゴールドスタインは、ジャイルズ・ストレンジ名義でソロ・シングルをリリースしました。さらに、フェルドマンとゴッテラーは、ストレンジ・ブラザーズ・ショウとしてもシングルをリリースしました。

ストレンジラブズのレコードには、「バセット・ハンドによるアレンジと指揮」というクレジットが頻繁に見られました。これは、バンドのクリエイターを皮肉ったペンネームでした。バセット・ハンド名義でリリースされたインストゥルメンタル・シングルも存在します。

2018年、53年の時を経て、フェルドマン、ゴールドスタイン、ゴッテラーは、サプライズ・ライブで共演を果たしました。

彼らの楽曲は、デヴィッド・ボウイ、バウハウス、J.ガイルス・バンドなど、多くのアーティストによってカバーされています。

ゴッテラーは、リチャード・ヘルとヴォイドイズ、ザ・フレッシュトーンズ、ブロンディなどのプロデューサーとして活躍。シーモア・スタインと共にサイアー・レコードを設立しました。また、ロカビリーを活性化させたロバート・ゴードンや、マーシャル・クレンショウのアルバムをプロデュースするなど、幅広い音楽を手がけました。その後、インディーズの配給会社オーチャードを設立。

ゴールドスタインは、プロデューサー兼マネージャーとして音楽業界に影響を与え続けました。Nightshiftにエリック・バードンと組むことを提案し、ウォーの結成に貢献。Circle Jerksをマネージメント会社に所属させました。

ストレンジラブズの3人は、ドキュメンタリー映画『BANG! The Bert Berns Story』に出演し、インタビューに答えました。

ボブ・フェルドマンは、2023年8月23日に83歳で亡くなりました。

ザ・ストレンジラヴズは、虚構のアイデンティティとユニークな音楽性で、1960年代の音楽シーンに大きな足跡を残しました。

もう一度検索