ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー (サウンドトラック)

『ザ・[[スーパー[[マリオブラザーズ]]・ムービー]]』サウンドトラックの詳細解説

2023年に公開された映画『ザ・[[スーパー[[マリオブラザーズ]]・ムービー]]』のサウンドトラックは、任天堂の人気ゲームシリーズ『マリオ』の世界観を、音楽で鮮やかに彩る作品です。長年マリオシリーズの音楽を手がけてきた近藤浩治氏の協力のもと、ブライアン・タイラー氏が映画音楽のほとんどを作曲しました。タイラー氏は、過去のゲーム音楽をリミックスしたオーケストラ楽曲に加え、映画のために書き下ろしたオリジナル曲も制作。さらに、英語版でクッパ役の声優を務めたジャック・ブラック氏が歌う『ピーチス』も収録されています。

制作の背景

映画音楽の制作は、2022年10月に発表されました。イルミネーションのクリス・メレダンドリ氏は、ブライアン・タイラー氏が近藤浩治氏と協力して映画音楽に取り組むことを公表。タイラー氏は、映画『ワイルド・スピード』シリーズやゲーム『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア3』の音楽、F1世界選手権のテーマ曲など、壮大なオーケストラ楽曲で知られていますが、実は子供の頃からマリオファンでもあったそうです。彼はこの映画音楽の制作を「特別な任務だった」と語っています。

タイラー氏がこのプロジェクトに参加することになったきっかけは、彼がディズニー映画『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』の音楽を担当した際のインタビューでした。アニメーション作品やビデオゲームへの愛情を語ったタイラー氏の記事を読んだマリオ映画の制作関係者が、彼に連絡をしたそうです。その後、映画監督のアーロン・ホーバス氏とマイケル・イェレニック氏、そしてマリオの生みの親である宮本茂氏と、近藤浩治氏とのZoom会議を経て、映画音楽の制作がスタートしました。

サウンドの特徴

タイラー氏は、この映画の音楽において、ゲーム原作へのリスペクトを最も重視しました。彼は、過去のゲーム音楽をそのまま使うのではなく、新しい音楽の中にマリオらしさを感じさせることを目標としました。使用されたゲーム音楽は、『スーパー[[マリオブラザーズ]]』、『スーパー[[マリオブラザーズ]]3』、『スーパーマリオ64』、『ドンキーコング』など多岐にわたり、その他ゲームからもライトモチーフが参照されています。彼は近藤氏のテーマを抽象的なサウンドとして再構成し、ヒップホップ、ジャズ、8ビットサウンドを融合させ、レトロでありながらも最新のサウンドを生み出しました。マリオのゲーム音楽は実に136箇所も散りばめられているそうです。

タイラー氏のスコアは、ゲーム音楽のリミックスやアレンジだけではありません。映画の悲しいシーンやロマンティックなシーンなど、ゲームのテーマではカバーできない部分には、オリジナル音楽が使われています。彼は、登場人物に合わせた音楽を、ストーリーに対し感情的に作用させることを重視しました。例えば、ピーチ姫のテーマは、美しく勝利を収めたメロディでありながら、必要に応じて暗くしたり、明るくしたりできます。このテーマは、ピーチ姫がヒーローであり、リーダーであり、そしてマリオのコーチでもあるという関係性を表現するために、力強いテーマになっています。

スコアは、壮大なオーケストラ、合唱団、バンド、イタリアの楽器、アコーディオン、アコースティックドラム、マンドリン、口笛など、多彩な音色で構成されています。タイラー氏は、映画『E.T.』の音楽のように、観客の感情を揺さぶるような音楽を目指したと語っています。

任天堂チームの協力

近藤浩治氏は、映画のシーンに合うと思ったゲーム音楽のリストをタイラー氏に提供しました。しかし、タイラー氏に指示をすることはなく、自由に作曲することを任せました。その理由は、特定のシーンでゲーム音楽が流れることで、映画を見ているのにゲームのことを思い出してしまい、観客の心が映画から離れてしまうのを避けたかったからだそうです。宮本茂氏は、映画のジャングルの部分で『ドンキーコング』の音楽や効果音をたくさん追加してもらったと明かしています。

映画で使用されたライセンス曲とタイラー氏の楽曲のバランスに関して、近藤氏は「映画に完璧にマッチするように構成してくれた」と語っています。宮本氏によると、映画には一時的にライセンス曲が配置されていましたが、映画のために作られた楽曲に置き換えようとしたそうです。しかし、ライセンス曲の方がより効果的だと感じたシーンもあり、それらはそのまま残しました。その理由について、宮本氏は「この映画のための楽曲には歌詞やボーカルがなく、映画音楽として違和感があるかもしれないと思い、叙情的なボーカルの力を取り入れよう」としたと説明しています。

クッパが『ピーチス』をピアノで弾き語りするシーンは、イルミネーションからの提案でした。当初、クッパが歌うシーンはなかったそうです。宮本氏は、ジャック・ブラック氏が「めちゃめちゃノリノリ」で、ライブ感があってよかったと感想を述べています。近藤氏は制作に関与していませんでしたが、「ブラックは素晴らしい歌唱力と声を持っていると思う。彼が歌うたびに笑ってしまった」と語っています。

プロモーションとリリース

サウンドトラックは、欧米での映画公開から2日後の2023年4月7日にデジタル配信が開始されました。その後、CD、LPレコード、カセットテープが発売されました。デジタル配信版は全37曲ですが、CD、LPレコード、カセットテープ版は全36曲で、収録曲順も異なります。2023年末には、『ピーチス』と『Mario Brothers Rap』を収録した7インチレコードが発売されました。

特に話題になったのが、ジャック・ブラック氏が歌う『ピーチス』です。この曲は、ミュージックビデオが公開されるとたちまち話題となり、Billboard Hot 100で56位をマーク。日本では、Spotifyのデイリーバイラルチャートで初登場1位を獲得し、5200万回以上再生されました。日本語版も公開され、声優の三宅健太さんがクッパ役として歌い上げています。

評価

このサウンドトラックは、批評家から概ね高い評価を得ています。Filmtracks.comは、「オーケストラと8ビットのインスピレーションを融合させるという目標を見事に達成している」と評価し、5点満点中4点を付けました。Soundtrack Universeは、「アルバムは4分の3あたりから退屈になり始めるが、タイラーの絶え間ないエネルギーと創造性のおかげで、約90分のアルバムはあっという間だ」と評価しています。Zanobard Reviewsは、「近藤の古典的なテーマとタイラー自身の真新しいテーマを幅広く織り交ぜる手法は、驚くべきもので最後まで聴くのが絶対的な喜びだ」と高く評価しています。また、ハリウッド・リポーターのFrank Scheckは、「映画同様にタイラーの熱狂的なサウンドトラックは、作曲家・近藤浩治によるゲームの音楽テーマを巧みにリフしており、適切な伴奏を提供している」とコメントしています。ジ・エスケイピストのMarty Slivaは、「タイラーはマリオシリーズの音楽の魔法で、素晴らしい効果をもたらせている事は注目に値する。この音楽のパワーは、コアなマリオのゲームの枠を超えるほど広大だ」と称賛しています。音楽評論家のJonathan Broxtonは、「マリオファンならこのスコアを楽しめるのは間違いないだろう」と評し、「タイラーが近藤の音楽に愛情を込めてオマージュを捧げたことは、任天堂の伝統に対する深い敬意を示しており素晴らしいことだ」と評価しました。

このサウンドトラックは、マリオファンだけでなく、映画音楽ファンにとっても必聴の作品と言えるでしょう。

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