ザ・ナイトメア・オブ・ドルアーガ 不思議のダンジョン

『ザ・ナイトメア・オブ・ドルアーガ 不思議のダンジョン』は、2004年7月29日にプレイステーション2用ソフトとしてアリカより発売されたダンジョン探索型RPGです。マトリックスが開発を担当した本作は、『不思議のダンジョン』シリーズのゲームシステムと、バンダイナムコエンターテインメント（旧ナムコ）の代表作『ドルアーガの塔』の世界観を融合させた異色のタイトルとして知られています。

ゲームシステム

基本的にはランダムに構造が変化するダンジョンを探索する、いわゆるローグライクゲームの形式を踏襲しています。しかし、従来のシリーズとは異なる独自の要素も多く取り入れられています。最大の特徴は、多くのローグライク作品でダンジョン構造が自動生成されるのに対し、本作のメインダンジョンはステージごとに固定マップとなっている点です。『ドルアーガの塔』のDNAを受け継ぎ、各フロアには特定の条件を満たすことで出現する隠し宝箱が多数存在します。次のフロアへ進むためには、フロアのどこかに隠された鍵を見つけ出し、扉を開ける必要があります。

プレイヤーキャラクターである主人公ギルの行動はターン制で進行しますが、行動の基盤となるのは「イシターの加護」という概念です。これは、他作品における「満腹度」に相当するパラメータであり、時間経過と共に減少していきます。加護が少なくなると周囲の光が弱まり、視界が徐々に狭まります。加護が完全に尽きると、視界が極端に悪化し、隣接する敵さえも認識不能となり、さらに自然回復もしなくなってしまいます。イシターの加護は、特定のアイテムを捧げることで回復できます。

本作独自のシステムとして、キャラクターやモンスターには「移動速度」と「攻撃速度」という二種類の速度が設定されています。ギルが装備する武器や鎧には「ウェイト」（重さ）の概念があり、武器は主に攻撃速度、鎧は移動速度に影響を与えます。自分の攻撃速度が相手より速ければ先制攻撃が可能ですが、遅ければ相手の攻撃を先に受けてしまいます。敵の速度は影の色で判別でき、青い影は自身より遅く、赤い影は自身より速いことを示します。最速の攻撃速度を持つことで全ての敵に先制できますが、必ずしも速度が全てではなく、相手の移動先を予測して攻撃を「置く」ことで、相手の移動判定前に攻撃を当てるテクニックも存在します。
移動速度は、どちらのキャラクターが先にターン行動できるかを決定します。移動速度が速ければ、敵の攻撃範囲から逃れることで攻撃を回避することも可能です。ダンジョン内の階段も速度に影響し、上り坂では移動速度が低下し、下り坂では上昇します。装備のウェイトは速度に大きく影響し、例えば重い鎧でも軽い武器を組み合わせることで移動速度の低下をある程度緩和できます。ただし、ギルは最軽量の装備でも一部の敵（最速攻撃速度を持つ一部種族やレジェンドモンスター）の攻撃を移動で回避することはできません。

一度クリアしたメインダンジョンのフロアは、鍵を使わずに扉を壊して進むことも可能です。この場合、ランダム生成される「アナザーダンジョン」へと進むことになります。アナザーダンジョンは敵のレベルがギルの現在のレベルよりも高くなるため、難易度が上昇します。しかし、ジェムや属性装備といった貴重なアイテムの入手確率が高まるメリットがあります。最深層では特に強力な「レジェンドモンスター」が出現し、倒せば強力な装備などを入手できる可能性があります。アナザーダンジョン内では帰還アイテム「フェザー」が使用できないため、脱出するには内部で鍵を見つけて通常ダンジョンへ戻る扉を開ける必要があります。また、アナザーダンジョン内の敵からは経験値を得られないため、レベルアップによる体力回復戦略が通用しない点にも注意が必要です。

アナザーダンジョン以外にも、特定の隠し条件を満たすことで通常ダンジョンのフロアにレジェンドモンスターが出現することがあります。これらは「表レジェンド」と呼ばれ、アナザーダンジョン版よりはやや弱く設定されています。通常ダンジョンであるためフェザーによる撤退が可能ですが、ドロップする装備品はアナザーダンジョン版ほど強力ではないことが多いです。

探索中にHPが尽きるとゲームオーバーとなりますが、本作ではいかなる状況でもHPが1で踏みとどまるセーフティ機能があります。これにより、ピンチからの立て直しや脱出が比較的容易になっています。また、マップ上の罠は全て最初から視認できるため、回避も容易です。しかし、ゲームオーバー時のペナルティは他の『不思議のダンジョン』シリーズと比較して厳しく、銘をつけていない全てのアイテムが消失し、所持金も半分になります。さらに、ゲーム中にリセットを行うと、再開時に女神イシターから説教を受けます。リセット回数が増えるほど説教は長くなり、最終的には諺や慣用句を問われるというユニークなデメリットも存在します。

ストーリー

物語は、ギルガメスが闇の君主ドルアーガを打倒し、バビリム王国に平和が戻ってから3年後が舞台となります。ギルの戴冠式とカイとの婚礼を翌日に控えたある日、カイが女魔導師スカルドにさらわれてしまいます。カイを追って再びドルアーガの塔へ足を踏み入れたギルは、やがて事件の意外な真相、そしてバビリム王国の未来を知ることになります。真のブルークリスタルロッドを取り戻し、カイを救い、ドルアーガの脅威を完全に断ち切るため、ギルはイシターの力を借りて過去へと時を遡り、かつてのドルアーガの塔を再び目指すことになります。

登場キャラクターとしては、勇者ギルガメス、その婚約者でありイシターの巫女であるカイ、謎多き女魔導師スカルド、復活を企むドルアーガ、ドルアーガ配下の悪魔サキュバス、バビリムを見守る女神イシター、そして天界の主神アヌが登場し、壮大な物語が展開されます。

敵モンスター

ダンジョンには様々な種族のモンスターが出現します。それぞれの種族には独自の特性やスキルがあります。

ナイト種：複数の亜種が存在し、速度や体力、固有スキルが異なります。特定のナイトは攻撃を受け流したり、ギルの武器を弾き飛ばす厄介な能力を持ちます。
リザードマン種：移動・攻撃速度は遅いですが、体力と攻撃力が高く、仲間を呼び寄せるスキルや体力が減ると凶暴化する特性を持ちます。
スライム種：最弱クラスですが、同族と融合してレベルアップするスキルを持ちます。上位種は魔法も使用します。
ウーズ種：スライムの派生種で、防御力が高く、相手の防御力を低下させるスキルを使用します。
ヴァンパイア種：体力と防御力が高く、睡眠攻撃を行うことがあります。
バット種：体力は低いものの、移動・攻撃速度が非常に速く、仲間を呼んだり混乱攻撃を仕掛けたりします。
スネーク種：毒などの状態異常攻撃を行うスキルを持つ敵です。
シーフ種：バット種と同様に最速の速度を持ち、ギルのアイテムを盗んだり、フロアのアイテムを拾ったりします。盗むアイテムは種類によって異なります。
ボーン種：体力と攻撃力が高く、一度倒しても一定時間後に復活する能力を持ちます。上位種は復活時の体力が全快になります。
エンジェル種：壁を透過して移動・攻撃が可能で、攻撃と同時に自身の体力を回復したり、同エリアの敵の体力を回復したりします。
マジシャン種：ステータスは低いですが、瞬間移動で動き回り、強力な魔法を使用します。魔法は2マス先まで届きます。
ゴースト種：マジシャン種の亡霊で、エンジェル種と同様に壁透過能力を持ちます。睡眠攻撃やワープスキルを使用します。
ローパー種：体力と防御力が非常に高く、与えたダメージを吸収します。ジェムによる攻撃魔法を無効化する強敵で、通常のダンジョンでもギルのレベル+αで出現します。
アーチン種：体力は低いですが、全モンスター屈指の攻撃力を持ち、常にギルの最大HPの7割を削るダメージを与えます。ジェムによる攻撃魔法を反射する能力も持ち、ローパー種と同様にギル+αの強さで登場します。
* ウィスプ種：移動・攻撃速度が最速で、攻撃を受けることもダメージを与えることもありません。隣接するだけでギルのHPを1にしてしまう最強の敵ですが、必ずしも即座に攻撃してくるわけではありません。攻撃後はワープします。長時間同じフロアに滞在すると出現する緑ウィスプは、増殖しながら積極的にギルを追跡してきます。

本作は、シリーズのファンだけでなく、歯ごたえのあるダンジョンRPGを求めるプレイヤーにとっても魅力的な作品と言えるでしょう。キャラクターデザインは岡崎武士氏、音楽は矢野雅士氏らが担当しています。

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