ザ・ナイト・ビフォア

ザ・ナイト・ビフォア：ビートルズの隠れた名曲

1965年、ビートルズのアルバム『ヘルプ!』に収録された「ザ・ナイト・ビフォア」。ポール・マッカートニーが中心となって作曲されたこの曲は、イギリスやアメリカではシングルカットされませんでしたが、日本やイタリアなどではシングルとしてリリースされ、幅広い人気を獲得しました。その魅力を深く掘り下げてみましょう。

曲の構成とレコーディング

この曲は、コールアンドレスポンス形式のヴァースが特徴的です。マッカートニーのリードボーカルに対し、レノンとハリスンが「Ah, the night before」とハーモニーを奏でる、シンプルながらも美しい構成となっています。音楽学者ウォルター・エヴェレットは、もしビートルズがこの曲をよりスローテンポで演奏していたら、キンクスやアニマルズのような曲になっていた可能性を示唆しています。

レコーディングは1965年2月17日、EMIレコーディングスタジオで行われました。リズムトラックはわずか2テイクで完成。その後、ボーカル、ギター、マラカスなどを重ねて完成にこぎつけました。ギターソロは、マッカートニーとハリスンの共同作業によるもの。レノンは後に、二人が同じフレーズを異なるオクターブで演奏したと明かしています。マッカートニーがリードギター、ハリスンがグレッチ・テネシアンでリズムギターを担当したという見解もあります。レノンのエレクトリックピアノもこの曲に独特の雰囲気を与えています。

リリースと評価

イギリスでは1965年8月6日、アメリカでは8月13日に発売されたアルバム『ヘルプ!』に収録。「イエスタデイ」のB面としてイタリアでシングルリリースされたほか、日本では「アナザー・ガール」をカップリングしたシングルとしても発売されました。「恋のアドバイス」という4曲入りEPにも収録されており、日本における人気を伺い知ることができます。その後も『ロックンロール・ミュージック』や『リヴァプールより愛を込めて ザ・ビートルズ・ボックス』といったコンピレーションアルバムに収録され、現在も高い人気を誇っています。2010年には、『ローリングストーン』誌が発表した「100 Greatest Beatles Songs」で49位にランクインするなど、高い評価を受けています。

映画『ヘルプ!』での使用とライブパフォーマンス

ビートルズの映画『ヘルプ!』では、ソールズベリー平原でのレコーディングシーンで使用されています。同じ場所で撮影されたハリスン作曲の「アイ・ニード・ユー」と共に、映画の重要なシーンを彩っています。

ライブでは、1965年5月26日の最後のBBCラジオセッションで演奏された記録が残っています。この演奏は同年6月7日に放送されました。そして、2011年7月15日、ポール・マッカートニーがヤンキー・スタジアムでのソロライブで初めてこの曲を演奏したことで、再び注目を集めました。

カバーバージョン

この曲は、多くのアーティストによってカバーされています。例えば、ハービー・マンは1966年のアルバム『トゥデイ』に、ラリー・ライスは1990年のアルバム『Artesia』に収録しています。時代を超えて愛され続ける、この曲の魅力が伺えます。

まとめ

「ザ・ナイト・ビフォア」は、ビートルズの数ある楽曲の中でも、独特の雰囲気と魅力を持つ一曲です。シンプルな構成でありながら、メンバーそれぞれの演奏技術とハーモニーが際立ち、聴く者を魅了します。シングルカットされなかった地域もあるものの、日本を含む世界中で愛され、カバーも数多く存在する点は、この曲の普遍的な魅力を物語っています。レコーディング風景や映画での使用、そしてライブでの演奏など、様々な角度からこの曲を紐解くと、ビートルズの音楽性と人気を改めて実感できるでしょう。

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