ザ・ビーチ・ボーイズ '85

『ザ・ビーチ・ボーイズ '85』は、1985年にリリースされたザ・ビーチ・ボーイズのアルバムです。このアルバムは、バンドのサウンドが打ち込みになり、デジタル技術によって時代にマッチさせようという試みがなされた作品として知られています。CDフォーマットで発売された初のオリジナル・アルバムでもあります。

1980年代に入り、音楽シーンはシンセサイザーやドラムマシンなどのデジタル楽器が台頭し、大きな変化を遂げていました。ビーチ・ボーイズも、そうした時代の流れに対応するため、本作では積極的にデジタル技術を導入。それまでの彼らのイメージとは異なる、新しいサウンドを追求しました。

アルバムからのシングル「ゲッチャ・バック」は、まずまずのヒットを記録し、本作以前のアルバムより売り上げは良かったものの、商業的には成功したとは言えませんでした。

1983年、ブライアン・ウィルソンは精神的な問題を抱え、再びユージン・ランディの治療を受けることになります。治療は効果を上げ、その夏にはビーチ・ボーイズのステージに復帰を果たしました。しかし、同年12月にはデニス・ウィルソンが不慮の事故で亡くなってしまいます。バンドは新譜制作を前に、デニスの死を悼み、前作『キーピン・ザ・サマー・アライヴ』から5年の歳月が流れました。

新譜制作にあたり、彼らは時代に合ったサウンドを取り入れる必要性を感じ、カルチャー・クラブのプロデューサーであったスティーヴ・レヴィンを起用しました。メンバー全員がアルバムのために曲を書き下ろし、スティーヴィー・ワンダーとカルチャー・クラブも楽曲を提供しています。

また、ゲイリー・ムーアが「メイビー・アイ・ドント・ノウ」「シー・ビリーヴス・イン・ラヴ・アゲイン」の2曲にギタリストとして参加しています。当時、日本ではゲイリー・ムーアの参加が話題となり、これまでビーチ・ボーイズとは縁遠かったハードロック/ヘヴィメタルのリスナーからも注目を集めることになりました。

発売当初は、バンドの再出発の意味を込めて、シンプルな『ザ・ビーチ・ボーイズ』というタイトルでしたが、2000年のキャピトル・レコードからの再発の際、それまでファンの間で通称として呼ばれていた「'85」がタイトルに付加されました。

収録曲は以下の通りです。

1. ゲッチャ・バック - Getcha Back
2. イッツ・ゲッティン・レイト - It's Gettin' Late
3. クラック・アット・ユア・ラヴ - Crack at Your Love
4. メイビー・アイ・ドント・ノウ - Maybe I Don't Know
5. シー・ビリーヴス・イン・ラヴ・アゲイン - She Believes in Love Again
6. カリフォルニア・コーリング - California Calling
7. パッシング・フレンド - Passing Friend
8. アイム・ソー・ロンリー - I'm So Lonely
9. ホエア・アイ・ビロング - Where I Belong
10. アイ・ドゥ・ラヴ・ユー - I Do Love You
11. イッツ・ジャスト・ア・マター・オブ・タイム - It's Just a Matter of Time
12. メイル・エゴ - Male Ego ※「ゲッチャ・バック」シングルB面曲。LPには未収録。

『ザ・ビーチ・ボーイズ '85』は、ビーチ・ボーイズが新たな時代に向けて変化を試みた意欲作と言えるでしょう。

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