ザ・ブック・オブ・ヘンリー

11歳の天才少年と、彼の残したノート―映画『ザ・ブック・オブ・ヘンリー』

2017年公開のアメリカ映画『ザ・ブック・オブ・ヘンリー』は、突出した知性を持つ11歳の少年ヘンリーとその家族、そして隣家の少女クリスティーナを中心に物語が展開します。日本での劇場公開はありませんでしたが、Netflixでの配信により、多くの視聴者に知られるようになりました。

ヘンリーは、数学や科学に秀でた天才少年。母親のスーザンと幼い弟のピーターと暮らしています。彼は近所に住むクリスティーナに心を奪われますが、クリスティーナは義父グレンからひどい虐待を受けていることを知ります。ヘンリーは、幼いながらもクリスティーナの苦境を救いたいと強く願います。そして、緻密な計画をノートに書き記します。それは、クリスティーナを救い出すための、彼の全てを込めた作戦でした。しかし、ヘンリーは予期せぬ病魔に襲われ、若くしてこの世を去ります。

ヘンリーの死後、母親のスーザンは彼のノートを発見します。そこには、息子の愛情と、並外れた知性によって生み出された、驚くべき計画が記されていました。スーザンは、息子の遺志を継ぎ、ノートに書かれた作戦を実行に移すことを決意します。

映画では、ナオミ・ワッツが複雑な感情を抱える母親スーザンを、ジェイコブ・トレンブレイが弟ピーターを、そしてジェイデン・リーバハーが天才少年ヘンリーを演じています。他に、クリスティーナ役のマディー・ジーグラー、義父グレン役のディーン・ノリスなど、実力派俳優たちが脇を固めます。

この映画の脚本は、1998年にグレッグ・ハーウィッツによって完成していましたが、長らく映画化が実現しませんでした。その後、ジェネット・カーンが脚本の映画化権を獲得し、製作が始動します。監督には当初、コリン・トレヴォロウが予定されていましたが、『ジュラシック・ワールド』の監督に抜擢されたため、一時的に監督探しは難航しました。しかし、トレヴォロウが『ジュラシック・ワールド』の撮影を終えた後、再びこのプロジェクトに参加することになり、2015年にニューヨークで撮影が行われました。音楽は、マイケル・ジアッチーノが担当しています。

公開は当初2016年9月を予定していましたが、興行収入増加を見込んで2017年6月に延期されました。ロサンゼルス映画祭ではオープニング作品として上映され、全米では579館で限定公開されました。しかしながら、興行成績は芳しくなく、公開初週末の興行収入は142万ドルあまりでした。

批評家の評価は、芳しくありませんでした。Rotten Tomatoesでは批評家支持率が21%と酷評されています。その理由は、物語の後半部分の急激な雰囲気の変化や、露骨な感情の演出にあると指摘されています。観客は感動するどころか、むしろ戸惑いを覚えるという声が多く挙がりました。Metacriticでも31/100と低評価です。

『ガーディアン』紙のピーター・ブラッドショーは、映画の内容を「恐ろしいはずなのに甘ったるい感傷的で、演技も悪く、ティーンエイジャーの不気味な静かな攻撃性だけが際立つ」と酷評しました。『ヴァルチャー』のエミリー・ヨシダは、「映画としての体さえ成していない。設定が不明瞭すぎて理解不可能」とまで言い切っています。

『ザ・ブック・オブ・ヘンリー』は、天才少年の切ない物語でありながら、その展開と演出、そして賛否両論を呼ぶ結末で、多くの議論を呼ぶ作品となりました。 Netflixで配信されているため、視聴者の評価は多様ですが、少年の純粋な愛と、その愛がもたらす衝撃的な展開は、観る者の心に深く刻まれることでしょう。

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