ザ・ムーブ (バンド)

ザ・ムーヴ (The Move)

ザ・ムーヴは、1960年代後半にイギリスで結成されたロックバンドです。特に、後に世界的成功を収めるエレクトリック・ライト・オーケストラ（ELO）の母体となったことで知られています。ロイ・ウッドのポップセンス溢れる楽曲と、ザ・フーに影響を受けたワイルドなステージングは、当時の音楽シーンに大きなインパクトを与え、後続のバンドにも多大な影響を与えました。

概要・略歴

1965年末、ロイ・ウッド、カール・ウェイン、トレヴァー・バートン、エース・ケフォード、ベヴ・ベヴァンによって結成されました。初期のライブでは、ロックンロールやモータウン、ザ・バーズなどのカバー曲を中心に演奏していましたが、レコードデビュー時からロイ・ウッドのオリジナル曲が採用され、彼のポップなソングライティングと奇抜なアレンジがバンドの特色となっていきます。

ザ・ムーヴは、時代とともに音楽性を変化させ、初期のビートバンド的なサウンドから、ポップでありながら重厚かつ前衛的な作風へと移行しました。この音楽性の変化は、ELOへと発展していく重要な足がかりとなります。

ザ・ムーヴ最後の作品となったアルバム『メッセージ・フロム・ザ・カントリー』の発表時のメンバーは、ロイ・ウッド、ジェフ・リン、ベヴ・ベヴァンの3名でした。彼らはそのまま初期ELOの中心メンバーとなります。ELO発足当初は、同じメンバーがザ・ムーヴとELOという2つのバンド名を使い分け、ライブはザ・ムーヴ、レコードはELOとして活動するなど、試行錯誤が行われましたが、最終的にバンド名はエレクトリック・ライト・オーケストラに統一されました。

ザ・ムーヴとしての活動期間は約5年と短いものでしたが、その間に「Blackberry Way」をはじめとする多くのヒット曲を生み出しました。1969年には「Blackberry Way」が全英チャートで1位を獲得し、12枚のシングルをリリースしたうち7作品が全英トップ10にランクインしています。

2004年には、創設メンバーであるベヴ・ベヴァンを中心に、32年ぶりにザ・ムーヴ名義で再始動しました。2006年には、同じく創設メンバーのトレヴァー・バートンも合流し、ライブを中心に活動していましたが、2014年にベヴァンとバートンが袂を分かつ形で活動を終了しました。

音楽性

ザ・ムーヴの音楽性は、時代とともに変化していきました。1stアルバムではサイケデリックなビート・ポップを展開していましたが、2ndアルバムあたりからハードロックやプログレッシブ・ロックの要素を取り入れ始めます。ジェフ・リンが加入してからは、後期ビートルズ的な要素も加わり、初期ELOの音楽性へと繋がっていきました。

逸話

トッド・ラングレン率いるナッズのデビュー・シングル「Open My Eyes」をザ・ムーヴがライブでカバーしたことがあり、これを受けてトッドは自身のバンド、ユートピアでザ・ムーヴの「Do Ya」をカバーしています。ザ・ムーヴが演奏した「Open My Eyes」は、ライブ・アルバム『ライヴ・アット・フィルモア・ウエスト 1969』で聴くことができます。

ジミ・ヘンドリックスのアルバム『アクシス:ボールド・アズ・ラヴ』の収録曲「You've Got Me Floating」では、ロイ・ウッドとトレヴァー・バートンがバックコーラスとして参加しています。

メンバー

最終ラインナップ

ベヴ・ベヴァン (Bev Bevan) - ドラムス/ボーカル (1965年–1972年, 2004年–2014年)
トレヴァー・バートン (Trevor Burton) - ギター/ボーカル (1965年–1969年, サポート2006年, 正規2007年–2014年)
フィル・ツリー (Phil Tree) - ベース/ボーカル (2004年–2014年)
トニー・ケルシー (Tony Kelsey) - ギター/ボーカル (2014年)
アビー・ブラント (Abby Brant) - キーボード/ボーカル (2014年)

旧メンバー

ロイ・ウッド (Roy Wood) - マルチプレイ/ボーカル (1965年–1972年)
カール・ウェイン (Carl Wayne) - ギター/ボーカル (1965年–1970年) RIP.2004年
エース・ケフォード (Ace Kefford) - ベース/ボーカル (1965年–1968年)
リック・プライス (Rick Price) - ベース/ボーカル (1969年–1971年)
ジェフ・リン (Jeff Lynne) - ギター/キーボード/ボーカル (1970年–1972年)
ニール・ロックウッド (Neil Lockwood) - キーボード/ボーカル (2004年–2014年)
フィル・ベイツ (Phil Bates) - ギター/ボーカル (2004年–2007年)
ゴードン・ヒーラー (Gordon Healer) - ギター/ボーカル (2007年–2014年)

ディスコグラフィ

スタジオ・アルバム

『ザ・ムーヴ』 - The Move (1968年)
『シャザム』 - Shazam (1970年)
『ルッキング・オン』 - Looking On (1970年)
『メッセージ・フロム・ザ・カントリー』 - Message From The Country (1971年)

ライブ・アルバム

Something Else from The Move (1968年) ※EP
『BBCセッションズ』 - The BBC Sessions (1995年)
『ライヴ・アット・フィルモア・ウエスト 1969』 - Live At The Fillmore 1969 (2012年)

シングル

Night of Fear / The Disturbance (1966年 UK Chart #2)
I Can Hear the Grass Grow / Wave Your Flag And Stop The Train (1967年 UK Chart #5)
Flowers in the Rain / (Here We Go Round)The Lemon Tree (1967年 UK Chart #2)
Fire Brigade / Walk Upon The Water (1968年 UK Chart #3)
Blackberry Way / Something (1968年 UK Chart #1)
Curly / This Time Tomorrow (1969年 UK Chart #12)
Brontosaurus / Lightning Never Strikes Twice (1970年 UK Chart #7)
Tonight / Don't Mess Me Up (1971年 UK Chart #11)
Chinatown / Down On The Bay (1971年 UK Chart #23)
California Man / Do Ya / Ella James (1972年 UK Chart #7)

関連項目

エレクトリック・ライト・オーケストラ
ロイ・ウッド
ジェフ・リン
ベヴ・ベヴァン

もう一度検索