ザ・ムーン

『ザ・ムーン』：ジョージ秋山による異色ロボット漫画

『ザ・ムーン』は、鬼才・ジョージ秋山が描いた異色のロボット漫画です。1972年から1973年にかけて『週刊少年サンデー』で連載され、単行本化、文庫化もされました。

あらすじ

物語の中心となるのは、大富豪・魔魔男爵が巨額の私財を投じて建造した巨大ロボット「ザ・ムーン」。男爵は、悪が蔓延る世界を憂い、力こそ正義と信じてムーンを創造しました。そして、真の正義を見抜ける純粋な心を持つ少年たちに、ムーンの操縦を託します。

サンスウ、シャカイ、カテイカ、タイソウ（サンスウの弟）、ズコウ、リカ兄弟（双子）、オンガク、ヨウチエン（オンガクの弟）という、個性的な名前を持つ9人の少年少女。彼らは心を一つにし、般若心経を唱えて精神を集中させることで、ムーンを操縦し、念力で空を飛ぶことも可能になります。

少年たちは、人々の幸せのために、連合正義軍や春秋伯爵といった悪に立ち向かいます。連合正義軍は、日本に水爆を落とそうと企み、春秋伯爵は、老人の悲哀を訴えながら悪事を重ねます。男爵の手下である糞虫という忍者のような男が、少年たちを陰から助けます。

しかし、物語は少年漫画とは思えないほど、過激で不気味な描写に彩られています。街中に晒される生首、ハンマーで額に釘を打ち込む殺人者など、秋山独特の表現が、物語に異様な雰囲気を醸し出しています。そして、物語は衝撃的な結末へと向かっていきます。

物語の主なエピソード

第一話 連合正義軍の平和: 巨大ロボット「ザ・ムーン」を与えられた少年たちが、水爆テロを阻止するために連合正義軍と戦う。
第二話 湖底の黄金: 湖に沈んだ黄金を巡る騒動に巻き込まれる少年たち。ダムの決壊を阻止するためにザ・ムーンが活躍する。
第三話 春秋伯爵のユートピア: 鉄人間を操る春秋伯爵が登場。ザ・ムーンは苦戦を強いられるが、少年たちの活躍で伯爵は倒される。
第四話 白原に死す: 宇宙人が現れ、地球に危機が訪れる。ザ・ムーンは巨大ロボット「黒龍号」に敗れ、世界はカビに覆われてしまう。少年たちは最後の希望を託してザ・ムーンを動かそうとするが、絶望的な結末を迎える。

登場キャラクター

サンスウ: 9人の少年たちのリーダー。責任感が強く、行動力がある。
カテイカ: 9人の少年たちの紅一点。刑事の娘。
シャカイ: 9人の少年たちの副リーダー。クールな性格。
魔魔男爵: 巨大ロボット「ザ・ムーン」を作らせた大富豪。少年たちにムーンを託し、彼らの活躍を見守る。
糞虫: 魔魔男爵の手下。忍者のような姿で、少年たちをサポートする。

用語解説

ザ・ムーン: 魔魔男爵が建造した巨大ロボット。9人の少年たちの脳波で操縦できる。
連合正義軍: 「正義」を掲げる秘密結社。水爆テロを企む。
ケンネル星人: 地球と友好条約を結ぶためにやってきた犬の姿をした宇宙人。

関連情報

本作は、鬼頭莫宏の漫画『ぼくらの』に影響を与えたことでも知られています。単行本1巻の帯にはジョージ秋山が推薦文を寄せています。

『ザ・ムーン』は、少年漫画の枠を超えた、ジョージ秋山ならではの独特な世界観が魅力の作品です。衝撃的な展開と結末は、読者の心に深く刻まれることでしょう。

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