ジョージ秋山

ジョージ秋山：波乱に満ちた人生と幅広い作品世界

ジョージ秋山（本名：秋山勇二、1943年4月27日 - 2020年5月12日）は、日本の漫画界に大きな足跡を残した漫画家です。東京都日暮里で生まれ育ち、5人兄弟の次男として、朝鮮人造花職人を父に持つ家庭で過ごしました。第二次世界大戦中の疎開や、父親の事業失敗による貧困生活など、幼少期は決して恵まれた環境ではありませんでした。しかし、そんな厳しい環境の中、秋山は幼い頃から漫画への情熱を燃やし、中学2年生時には自作の漫画本を制作するほどでした。

高校進学を勧められたものの、家庭の経済状況を考慮し、中学卒業後に上京。神田の貸本漫画取次店「芳明堂」に就職しました。芳明堂勤務時代は、持ち込んだ原稿を若木書房に持ち込んだり、漫画家の前谷惟光邸へ通うなど、漫画家への道をひたむきに歩み始めました。この頃、前谷惟光名義で出版された単行本が、彼の最初の出版物となります。また、貸本漫画誌にも作品を発表しており、『風魔』（東邦漫画出版社）に掲載された「嵐と忍者」は、白土三平氏から高い評価を得ています。

芳明堂退職後は、アルバイトをしながら日本放送映画でテレビアニメ『戦え!オスパー』制作に携わりました。その後、講談社に持ち込みを続け、森田拳次氏に師事。アシスタントとして働きながら、貸本漫画誌で作品を発表し続けました。1965年、「別冊少年マガジン」新年号に掲載された「いじわるE」が、彼のデビュー作と言われています。同年に「少年画報」に「トッピナ作戦」、「冒険王増刊」に「ロボット戦争」を発表。1966年には「別冊少年マガジン」に掲載された『ガイコツくん』が人気を博し、翌年には連載依頼を受けた『パットマンX』がヒット、第9回講談社児童まんが賞を受賞するなど、ギャグ漫画家として頭角を現しました。

『ざんこくベビー』『コンピューたん』『ほらふきドンドン』『デロリンマン』など、ペーソスあふれるギャグ漫画で人気を博した秋山でしたが、1970年からは大きく作風を変え、週刊少年サンデーで『銭ゲバ』、週刊少年マガジンで『アシュラ』を発表。人間の善悪やモラルを問う、露悪的ともいえる描写は、世間に衝撃を与え、大きな話題を呼びました。特に『アシュラ』第1話では、飢餓から人肉を食べる女性の描写が、一部地域で有害図書指定されるなど、社会問題に発展する騒動を引き起こしました。

この騒動の最中、1971年には週刊少年サンデーで『告白』の連載を開始。虚実入り混じった自身の過去を綴ったこの作品は、連載終了後、一時引退を宣言し、日本一周の放浪の旅に出るきっかけとなりました。3ヶ月後、週刊少年ジャンプで『ばらの坂道』で復帰すると、青年誌にも活動の場を広げました。1973年には、小学館のビッグコミックオリジナルで時代劇漫画『浮浪雲』の連載を開始。幕末の東海道・品川宿を舞台に、主人公・浮浪雲の飄々とした生き様と、周囲の人々の喜怒哀楽を描いたこの作品は、44年にわたる長期連載となり、112巻に及ぶ大ヒット作となりました。1977年度の花園大学の入試問題にも採用され、渡哲也さん、ビートたけしさん主演で2度テレビドラマ化されるなど、幅広い世代から支持を集めました。

『浮浪雲』以外にも、1980年から1984年まで週刊漫画ゴラクで連載した成人向け漫画『ピンクのカーテン』は、日活ロマンポルノとして映画化され、大ヒットシリーズとなりました。また、聖書の漫画化を手がけるなど、その活動は多岐に渡りました。2020年5月12日、77歳で逝去。その独特の作風と、波乱に満ちた人生は、多くの読者に深い印象を与え続け、日本の漫画史に燦然と輝く存在です。

主な作品

『ガイコツくん』
『パットマンX』
『アシュラ』
『銭ゲバ』
『浮浪雲』
『ピンクのカーテン』
『聖書』 (漫画版)

受賞歴

第9回講談社児童まんが賞（『パットマンX』）
* 第24回小学館漫画賞青年一般部門（『浮浪雲』）

人物像

知能指数120、身長170cmと知られる秋山は、自身について「漫画は嫌い」「漫画を読むとバカになる」「手塚治虫の作品は読んだことがない」と発言していたとされますが、実際は漫画を愛し、手塚治虫を尊敬していたという証言もあります。この発言は、独特の照れ隠しや、本心をなかなか明かさない彼の性格を表しているのかもしれません。また、ペンネーム「ジョージ秋山」は、ドラマーのジョージ川口のようなバンドマン風にしたかったという、若気の至りだったと語っています。

彼の作品は、ギャグ漫画から社会派作品、時代劇まで幅広く、常に読者や社会を驚かせ、考えさせるものでした。その独特の作風と、波乱に満ちた人生は、これからも多くの人々に語り継がれることでしょう。

もう一度検索