『ザ・ワイズ・メン』:冷戦期アメリカ外交を支えた賢人たちの物語
『ザ・ワイズ・メン』(The Wise Men)は、ウォルター・アイザックソンとエヴァン・トーマスによって
1986年に著された
ノンフィクション作品です。本書は、第二次世界大戦後のアメリカ
外交政策において、重要な役割を果たした6人の人物に焦点を当て、彼らの活動と影響を詳細に描いています。
冷戦時代の外交政策を主導した6人の賢人
本書で紹介される「ワイズ・メン」とは、以下の6人です。
ディーン・アチソン:トルーマン政権の国務長官
チャールズ・E・ボーレン:駐ソ連、フィリピン、フランス大使を歴任
W・エイヴリル・ハリマン:
フランクリン・ルーズベルト大統領の特使
ジョージ・F・ケナン:駐ソ連、ユーゴスラビア大使、国務省政策企画本部長
ロバート・A・ラヴェット:トルーマン政権の国防長官
ジョン・J・マクロイ:陸軍省官僚、後に占領ドイツ高等弁務官
彼らは、
弁護士、銀行家、外交官といった多様な経歴を持ちながらも、東海岸の
エスタブリッシュメントとして、互いに深い関係を築いていました。特に、アチソン、ハリマン、ラヴェットの3人は、プレップ・スクール、
大学、
ウォール街時代からの旧知の間柄であり、共にアメリカ外交の中枢を担いました。一方、ボーレン、ケナン、マクロイは、後から加わり、公私ともに密接な関係を築くようになりました。
彼らの多くは、
ヘンリー・スティムソン陸軍長官から強い影響を受けていました。スティムソンの師である
エリフ・ルートは、「ワイズ・マン」の典型と見なされています。彼らは、スティムソンの指導の下、現実的で非イデオロギー的な
外交政策を追求しました。
冷戦政策の立役者たち
トルーマン大統領は、
外交政策に関する知識が乏しかったため、彼らを外交顧問として招集しました。この6人は、ソ連の勢力拡大に対抗する超党派的な
外交政策の構築に貢献し、
トルーマン・ドクトリン、
マーシャル・プラン、
封じ込め政策といった重要な政策の立案・実行を主導しました。特にジョージ・F・ケナンは、「
封じ込めの父」として知られています。
「ワイズ・メン」の理想像
本書では、彼らを理想的な政治家として描き、アメリカの
外交政策立案の模範としています。実務的、現実的、非イデオロギー的なアプローチは、後の政治家たちにも大きな影響を与えました。彼らが公の場から退いた後も、彼らのような考えを持つ体制派の長老たちは、「ザ・ワイズ・メン」と呼ばれるようになりました。
ベトナム戦争への関与
1967年と1968年には、ジョンソン大統領がベトナム戦争について助言を求めて彼らを召集しました。当初はベトナム残留を提言したものの、その後の会合では、戦争の勝利が困難であると判断し、米軍の撤退を勧告しました。この判断は、アメリカのベトナム政策に大きな転換をもたらしました。
後世への影響
「ザ・ワイズ・メン」は、後の
クラーク・クリフォード、ジェイムズ・ベイカー、ロバート・シュワーズ・ストラウスといった公人たちの評価基準となりました。彼らの功績は、アメリカ外交における理想的な姿として、今なお語り継がれています。
『ザ・ワイズ・メン』は、
冷戦時代のアメリカ外交を支えた賢人たちの物語を通じて、国際政治におけるリーダーシップの重要性を教えてくれる一冊です。