ザール (フランス保護領)

ザール保護領とは

ザール保護領（ドイツ語: Saarprotektorat、フランス語: Protectorat de Sarre）は、1947年から1956年までの間、現在のドイツ・ザールラント州に存在したフランスの保護領です。第二次世界大戦後、ザールはドイツから分離され、フランスの保護下に置かれました。これは、戦前の国際連盟管理地域と同様の扱いでした。

歴史的背景

フランスは、ザールをドイツから分離した状態を維持しようと試み、親ドイツ政党を禁止しました。しかし、1952年の総選挙では、有権者の24%が親ドイツ政党を支持する白票を投じました。とは言え、この選挙結果は、圧倒的多数が親フランス政党を支持していることを示すものでした。

1954年のパリ協定において、フランスは西欧同盟の支援を受け、ザールを独立国として認めようとしました。しかし、1955年に行われた住民投票で、ザール住民は独立ではなく、当時の西ドイツ首相コンラート・アデナウアーが提唱するドイツへの復帰を選択しました。

ドイツへの復帰

この住民投票の結果を受け、1956年10月27日にザール条約が締結され、1957年1月1日、ザールはザールラント州として西ドイツ（ドイツ連邦共和国）に復帰しました。ただし、経済面ではフランス・フランが引き続き使用され、ドイツ・マルクがザールの通貨として導入されたのは1959年7月6日のことでした。この日をもって、ザールは名実ともにドイツへ完全復帰を果たしました。

フランスの思惑と経済的影響

フランスがザールに固執した背景には、この地域の豊富な石炭資源がありました。そのため、西ドイツはフランスの権益を一部認め、1981年までザールにおける炭田の採掘を許可しました。この措置は、ザールの経済と、フランスとの関係に大きな影響を与えました。

文化・スポーツにおける独自性

ザール保護領時代には、独自の代表チームが国際的なスポーツイベントに参加していました。1952年のヘルシンキオリンピックには、36名の選手からなるザール代表選手団が参加しています。また、サッカーにおいても独自の代表チーム（サッカーザールラント代表）が結成され、1954 FIFAワールドカップ・予選などに出場しました。これらの活動は、ザールが一時的に独立した地域として存在したことを象徴しています。

まとめ

ザール保護領は、第二次世界大戦後の複雑な国際関係の中で生まれた、一時的な政治的実体でした。住民の意思によってドイツへの復帰を果たし、現在のザールラント州として発展を続けています。


関連項目
欧州石炭鉄鋼共同体
アメリカ合衆国による沖縄統治、沖縄返還

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