ザーンダム

ザーンダム（Zaandam）は、オランダ北部の北ホラント州に位置するザーンスタット自治体に含まれる主要な地区です。

概要

ザーンスタット自治体の中でも最も多くの人口を擁し、その行政および生活の中心地としての役割を担っています。オランダの首都アムステルダム市のすぐ北に隣接しており、両市街地の間は東西に延びる北海運河によって隔てられています。また、ザーンダム地区の中央部を南北にザーン川が流れ、地域の景観を特徴づけています。

歴史

ザーンダムは、かつて独立した基礎自治体（ヘメーンテ）として存在していました。1811年に自治体としての権利が与えられ、1974年に周辺の地域と合併して現在のザーンスタット自治体となるまで、独自の行政区画でした。

歴史的に見ると、ザーンダムは特に17世紀から18世紀にかけて、ザーン川沿いに数千基ともいわれる風車が立ち並び、大規模な工業地帯として栄えました。これらの風車は、造船業や製紙業に不可欠な木材を加工する製材業を中心に利用され、ザーンダムはオランダ経済の一角を担う存在でした。

現代のザーンダム

現代のザーンダムは、アムステルダムへの交通利便性の高さから、その主要なベッドタウンとして機能しています。多くの住民が日々の通勤や通学のために、アムステルダムや周辺都市へ通っています。

また、ザーンダムはオランダ国内最大規模のスーパーマーケットチェーンであるアルバート・ハインの本社が置かれていることでも広く知られています。

ユニークなエピソード

ザーンダムは、いくつかの興味深い歴史的なエピソードでも知られています。

ピョートル大帝の訪問：18世紀末、ロシア皇帝ピョートル1世（ピョートル大帝）が、造船技術を学ぶために身分を隠してヨーロッパ各地を訪れましたが、その際にザーンダムで修業したという記録があります。彼が滞在したとされる質素な建物は現在も保存されており、観光スポットとなっています。
オリンピック選手団の宿舎：1928年にアムステルダムで開催されたオリンピックの際、日本選手団はアムステルダム市街ではなく、静かな環境を求めてザーンダムに宿舎を構えました。当時の監督であった山本忠興氏は、選手たちが競技に集中できるよう、市街地の喧騒を避けるためにザーンダムを選んだとされています。選手の一人である南部忠平は、自伝の中でザーンダムの人々が非常に親切だったと記しています。
ヨーロッパ初のマクドナルド：意外な話ですが、1971年にヨーロッパで初めてマクドナルドの店舗が開業したのは、このザーンダムでした。

観光スポット

ザーンダム自体にも魅力的な観光スポットがありますが、特に近郊にある野外博物館「ザーンセ・スカンス」へのアクセス拠点としても重要です。ザーンセ・スカンスは、かつてのザーン地方の暮らしや産業を再現した場所で、実際に稼働している風車や歴史的な木造家屋を見ることができます。ザーンダムからはバスや自転車などで容易にアクセスできます。

また、前述のピョートル1世が滞在した小さな家（Tsaar Peterhuisje）も保存されており、歴史好きには興味深い場所です。

交通アクセス

ザーンダムからアムステルダムへの交通アクセスは非常に便利です。

鉄道：オランダ鉄道（NS）のザーンダム駅からは、アムステルダム中央駅まで特急列車でわずか約12分です。列車は概ね10分に1本程度の高頻度で運行されています。
バス：Connexxionバスの91系統などを利用すると、アムステルダム中央駅東バスターミナルまで約25分で移動できます。こちらも比較的運行本数が多いです。
渡船：北海運河を横断するGVBの渡船を利用し、バスと乗り継ぐことでアムステルダム市街地へ向かうルートも選択肢としてあります。

ザーンダムは、歴史的な産業の面影を残しつつ、現代的なベッドタウンとして発展し、さらにユニークなエピソードや周辺観光への玄関口としての魅力も併せ持った地域と言えます。

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