シェイヴド・フィッシュ〜ジョン・レノンの軌跡

『シェイヴド・フィッシュ〜ジョン・レノンの軌跡』

『シェイヴド・フィッシュ〜ジョン・レノンの軌跡』は、1975年にジョン・レノンが「ジョン・レノン／プラスティック・オノ・バンド」としてリリースした初のコンピレーション・アルバムです。この作品は、彼が生前にリリースした唯一のコンピレーション・アルバムであり、レノン自身による選曲とコンセプトの構成が特徴的です。

背景とリリース経緯

1975年の初めに、レノンはカバー・アルバム『ロックン・ロール』を発売しました。その後、彼は1967年からの9年間でのEMI／キャピタルとの契約が終了する前に新しいアルバムを制作する計画を持っていましたが、前年にオノ・ヨーコとの和解を果たした彼女が妊娠したことから、過去の楽曲を集めたコンピレーションアルバムの方針に変更しました。

このアルバムは、他のビートルズのメンバーが関わる同時期のコンピレーションとは違い、すべての収録曲やその順番、アルバムタイトル、そしてジャケットやインナー・スリーブのデザインまでレノン自身が監修しました。そのため、「平和を我等に」で始まり、「平和を我等に」で終わる、まるでコンセプト・アルバムのような構成が実現しました。

アルバム・ジャケットとデザイン

アルバムのジャケットは、ロイ・コハラがデザインを担当しました。表面には、マイケル・ブライアンによる11種類の収録曲のイメージ画が並び、中央には日の丸をモチーフにしたアルバムタイトルが配置されています。裏面には、アルバム名の由来となった「削り節（鰹節）」が描かれ、右下にはウィンストン・オーブギー博士によるメッセージが添えられています。このメッセージは「沈黙の陰謀は言葉よりも雄弁である」という内容で、アルバム全体のメッセージ性を強調しています。

インナー・スリーブには、表面に「日の丸」、裏面には赤い地に収録曲の歌詞が印刷されていますが、歌詞の一部は実際のものと異なる箇所が存在しています。

音楽と収録曲

このアルバムには、アメリカでリリースされたプラスティック・オノ・バンドのシングル13作の中から、カバー曲を除く11曲が収められています。特筆すべきは、一部の楽曲がこのアルバムのために編集されている点です。具体的には、「平和を我等に」では最初の1分間がフェードインで、最後もフェードアウトで処理されています。また、「マザー」、および「女は世界の奴隷か！」、「真夜中を突っ走れ」でもそれぞれフェードアウトや曲の一部が短縮されて編集されています。特に、「ハッピー・クリスマス（戦争は終った）」はライブパフォーマンスの様子が収録されているため、独特な完成度を持っています。

アルバムのリリース後、ジョン・レノンは一旦音楽活動から距離を置き、息子ショーンの育児に専念しました。彼は1976年2月にEMI/キャピタルとの契約を更新することには興味を示さず、1980年のアルバム『ダブル・ファンタジー』まで新たなレコード契約を結ぶことはありませんでした。メロディと歌詞にこもった彼のメッセージは、今も多くの人々に感動を与えています。

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